D.Gray-man
「アレンっ!!」
痛い?
アレンは傷の手当をしながら今にも泣きそうな表情だった。ラビはそんな顔をさせたいわけじゃないのにと思いながら手当を受けていた。
「痛いですか?」
「うんにゃ、痛くはない」
本当は少し痛かったが、アレンの表情を見るとついそんな言葉を返してしまう。
「痛いですよね、やっぱ」
「おーい。聞いてる?」
ラビの答えは聞き入れなかったらしい。一方的な言葉がアレンの口から発せられた。
「ごめんなさい。僕を庇ったばっかりに」
「俺が好きでやったんさ。アレンが謝ることじゃないっしょ?」
出来るだけ、明るく諭す。こうでもしないと自己犠牲精神の持ち主には通用しない。この言葉だって、中々聞き入れようとしないだろう。
「…でも、僕がもっと早く気付けばラビも傷付くことはなかったんです」
「…アレンだってずっと戦い続けで疲れてたんだろ?俺だって同じ状況だったらそうなっているかもしれないさ?」
ラビは応援にかけつけた。アレン一人では負担が掛かり過ぎるからと。
アレンが任務先に着いて二日後にラビは到着したのだ。
「・・・」
自身の言葉にとうとう黙り込んでしまったアレンを見、どうしたものかとラビは思案にくれた。
手当を済ませ、暫く沈黙が訪れた。
「なあアレン」
「はい?」
ラビは静かに呼んでみる。アレンも同じようにゆっくり顔をあげた。
「痛いのはアレンのココ?」
ラビがそう言って示したのはアレンの胸。
「痛い?」
「ん」
アレンはきょとんとした顔。ラビの言っている意味を計りかねている。
「僕のココロが?痛いって?」
「うん…アレンは自分の所為でヒトが傷つくと哀しくなるんじゃない?」
「…」
アレンは何も言い返せない。ラビの発言が的を得ていたというのもあるだろうけれど。
「でもそれって大事な気持ちさね。アレンには無くさないで欲しいけど、そんな顔させたくはないんさ、俺」
庇ってしまったのはアレンにこれ以上傷ついて欲しくなかったから。
そんな顔をさせたくないのも事実。
「ラビ…ごめん…」
以前、自分を好きだと言ってくれたラビ。その気持ちは凄く嬉しいけれど、傷付いて欲しくはなかった。だから答えを返せなかった。
アレンはそれを言えずに黙ってしまう。やはり自分は『厄』を呼ぶ人間だから。
「だから謝るなーって!!それに俺、アレンの力になりたいし?」
ラビの言葉と彼の気持ちを聞いて、アレンは項垂れた。
これでは何を言っても無理なのかもしれない。
ラビは少しだけ切なくなった。
「なあ…オレ、少しはアレンの力になれてる?」
「っ!?そんなのっ…僕は…」
「?」
いらないというのだろうか?
ラビは一瞬、拒否されることを考えた。それも仕方ないのかもしれない。好きなのをやめるつもりは毛頭なかったけれど。
「僕の所為で怪我される方が痛いんです、僕は。だから力にとかそんなの…」
ああ、やっぱり拒否されるのかな、とラビは哀しそうにアレンを見つめた。
しかし次の言葉は予想とは違っていた。
「だってとっくにラビは特別だから!僕の…一番大切な人なんですよ?今更なんです」
自分が『厄』を持つ人間だと言っても、その想いは変えられない。今更。
「え・・・?」
ラビは信じられない面持ちでアレンを見つめ返した。いまさらりと衝撃の告白を聞いた気がする。気のせいでなければ。
「今の…もイッカイ…」
「言えるワケないでしょう?もうっ!!」
アレンは真っ赤になった顔を見られたく無かったから、俯いて顔を隠してしまった。
「…ラビは…だからとっくに僕の力になってるんです。その力の源の人が怪我したら、どうなると思ってるんですか!」
しかしアレンは言葉を続けた。途中で止めたら一生彼は自分を庇い続けることをするのだろう。言ってもきかなそうではあったが。
それでもそう伝えることで、彼が自分を庇わなければ『厄』のとばっちりはないだろうと思って。
思っていたよりも、それには勇気が言った。言った後で凄く恥ずかしい想いになってしまうのは予想外。
「どうしよう。すっげぇ嬉しい」
ラビもやっとアレンの言葉を理解し、真っ赤になった顔で微笑んだ。
気持ちが伝わることが酷く心地良くはがゆいものであることを生まれて初めて知った。
アレンは歩けるというラビに手を繋がれながら帰路に向かう。いつもならラビのイノセンスでひとっ飛びなのに、今日はゆっくり帰りたいという彼に合わせて。
「あの、まだ痛みますか?」
見た目は派手に出血したが、それほど痛みはない。
それを口にだすのは勿体ないこの状況。
「んー痛いから、帰ったら看病よろしく♪」
「…調子よすぎです…」
ラビが言った言葉にアレンは苦笑したものの、帰ったから看病はするつもりで。
二人の周りをすっかり忘れ去られていたティムキャンピーが飛び回っていた。
痛いがいつのまにか告白劇になってました!!!
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