D.Gray-man
そうしようとしたのは初めから思っていたワケじゃない。
寒い?(寒くない?)
「さむっっ!」
「寒い?」
「当たり前です!あたり一面雪じゃないですか!ていうかココどこ?」
アレンは朝食を済ませて談話室を通り自室へ向かうところでラビに捕まり、無理やり連れられて来た。場所は槌のスピードで見えなかった。
「あはは。教団の屋上?」
「何悠長に構えてるんですか!ていうかなんで?!」
アレンは怒り顔。ラビはそんな怒りも横に受け流してしまって。
「いやぁ。アレンと二人きりになりたくて」
「殴られたいんですか?それとも吹っ飛ばされる方がお好みで?」
「どっちもごめんさー」
アレンがイノセンスを発動させるとラビが笑いながら横に飛んでかわした。もとより狙ってやっているわけでないと分かるので足取りは軽やかでゆっくり。
「もうっそういう冗談は止めて下さいって言ってるでしょう!」
「付き合えよ、アレン。どうせなら雪合戦♪」
「…たった二人で雪合戦なんて不毛極まりないじゃないですか」
相変わらず人の話を聞かないラビに、がっくりと肩を落として突っ返す。
「まあそういわず。じゃあ雪だるまつくんね?」
「それくらいなら・・・ていうか他の誰かでも良かったんですね」
構うの。
アレンは苦笑して項垂れた。ラビの悪戯は今に始まったわけじゃないからもう諦めて。
付き合うことにすべく、しゃがみこんで雪をまるめ始める。
任務が入らない時、二人が教団に居る時は大抵ラビがアレンを構うのだと知る者は多い。知らないのはアレン1人のみだ。
「他の誰かじゃ誘わなかったさ…」
「え?」
わしゃわしゃと雪を押さえつけていたらそんな声。
しかしラビの小さい声は聞き取れずアレンは訊きかえしたのだが、返すつもりはなかったらしい。
「こう雪だらけだと、アレンは保護色であっというまに埋もれるさね」
「何気に失礼発言やめて下さいラビ」
保護色ってなんですか!動物じゃあるまいし。
アレンは再び抗議の為の攻撃をした。雪だまを彼に向かって投げる、というものだったが。
「そんなヘロヘロ球じゃあたらないさー」
ラビはそれでもうまくかわす。
「やりますね…それではこれでどうだ!」
「いやいやこう投げないと!」
雪だるまつくりから雪合戦になってしまった。
団服がいかに丈夫といえど水分の吸収率は良かった。
雪合戦(?)にも飽きて、雪だるまをこれでもか!とばかりに作って、さあ戻ろうという頃には団服が重くなっていた。
「ん〜困るんだよね。いつ任務が入るのかも分からないのに」
それを見咎めたリナリーがコムイに知らせてしまい、呼び出しを食らったのは室内に降りて数分後。
「スミマセン…」
「〜♪まー堅いこといいっこ無しさ」
アレンは直ぐ謝ったが、一番の言いだしっぺは口笛なぞ吹いてどこふく風。
「誰の所為ですか…」
「…スミマセン」
さすがにアレンの剣幕にはたじろいでラビは謝った。
コムイもそれには苦笑するしかなかった。
「やっちゃったもんは仕方がないよ。ラビとアレンは今日一日教団で待機ね」
「なんで俺も?」
てっきり午後辺りから任務が入るからと今のうちにアレンと戯れていたのに。
「君にはアレン君の管理を任せる。風邪引かせないように」
コムイの指示に二人はそれこそ心外な表情を返す。
「はぁ?」
「大丈夫ですよ、僕」
「何言ってるの二人とも。ラビ、先輩なら後輩を可愛がるのは当たり前だけど無理強いしないの」
そういって指差したのはアレンの顔。
「へ?ありゃー…」
ラビはコムイに指摘されてアレンの顔をのぞきこむ。思わず至近距離で見つめられて退いてしまうのは仕方が無い。
「なんですか?」
「お前の唇、紫色になってる。悪かったさ」
そんなに寒かった?
「え?」
「自覚が無いのは一番怖いさ。じゃーコムイ、そゆことで」
「ん。宜しくね」
ラビはアレンの首根っこを捕まえて部屋に向かって。
「ちょっくらしたい事もあるし、俺の部屋でいいよな?アレン」
「…構いませんけど」
「……」
雪解けの水は団服だけで中までは浸透しなかったのが幸いだったのかアレンは団服を脱いだ後ラビに入れてもらったココアを飲んで床に敷いた絨毯の上でうとうとしていただけだったのに。
二言三言会話を交わしていたラビはアレンからの返事が途絶えたことに気づき、読んでいた本から面をあげた。
「ていうか何でこの状況で眠れるんかな?」
仮にも男の部屋で。かなりちょっかい掛けて意識させてやっているラビは策士。
とは言ってもアレンは普段男装している上に自称で『僕』。ラビは既にアレンから聞いて実は女の子です、とは知っているものの、教団内で真実を知っているのは指折り程度。
コムイも知っているからラビに任せたのだろう。
しかもラビはアレンに『女の子扱いはしないで下さい。』とにっこり釘をさされてしまっていた。ラビもその辺は了承したものの、気持ちの上ではアレンは可愛い女の子。どうしてもちょっかいを出してしまう。アレンは一人のエクソシストとして接して欲しいらしいが。
神田とはもともと出会いが最悪だったからか、アレンは入団時と変らない態度だったし、神田も相変わらず「モヤシ」呼ばわりだ。
リナリーは今科学班の手伝いで忙しく、アレンが返って気を使うから、と。
そういえばアレンは生まれてからずっと男性と二人きりという環境にある。
聞いた話だったが、一つ目は養父マナ。二つ目はクロス・マリアン元帥。
「というかそんなに雪だるまに労力割いたんかね?つか雪合戦か?」
いつの間にか何を言ってもぴくりともしなくなっていたアレンにラビは苦笑した。
もしかしたら危機感が薄いのかもしれないとラビは思った。
「襲われても文句言えないさ?」
そのまま絨毯の上に寝かせておくのも可哀相だと抱き上げてベッドに寝かせてやった。
「…アレン」
眠っているアレンの唇に自分のを落とすように重ねた。
軽く触れるだけの口付け。彼女の唇はほんのりと甘い。
「て…こんな事知ったらお前はどう思うかな」
眠る彼女の唇を盗んで食らっているなんて。
「…じじぃが留守で助かったさ」
アレンは知らない。自分の奥底に眠っている欲望なんて。
普段はこれでも抑えているつもりだ。お互い足枷にならないように、と。
今は気持ちを告げるつもりも無い。いずれは抑えきれなくなっていくだろうと知っていても。
「ごめんな」
ブックマンにはいらないから。こんな偏った感情、知らなくてもいい。
ラビがアレンをじっと見詰めていたら、アレンが寝返りを打った。
「ん…」
「!?」
「さむ…」
「アレン?」
一瞬起きてしまったかと心配したが、アレンは寝言で言っただけらしい。
ベッドの上に寝かせただけのアレンは身体を丸めてしまっていた。
「アレンを風邪引かせたらリナリーが怖いさぁ」
さてどうするかとラビは周りを見渡して、毛布のほかに掛けられるものは何もないことに気づく。
何しろ先ほどの雪で団服はぐっしょり濡れている。
ラビは考えた挙句、アレンの隣に身体を置いた。足元に寄せてあった毛布をアレンと二人で被って。
「これなら俺も寒くないよな…」
ちょっとばかり理性は試される状況になってしまったが、寝ている子にそんなことをする気も起きない。
「お休みさ、アレン」
額にちゅっと軽い口付けをしてラビは少女の身体を抱きしめ、眠ることにした。
翌朝。
あったかい。
アレンが夢うつつの中で感じたのは自身を包むぬくもり。
窓から差し込む日差しに朝だということを身体が感じて目蓋を開いた。
うっすらと開かれた視界に映るのは部屋の風景ではなく茶一色。
「?」
シーツや毛布なら色は白や淡色のカラーだろうがなぜ茶色?というのはアレンが視線をずらすことではっきりする。
「…っ!?」
アレンが見上げた先にあったのは穏やかな寝顔。
しかも彼の両腕はしっかり背中と腰に回されていた。暖かかったのは彼のぬくもりだと理解した。
「なっ…」
なんでラビが!?ていうか僕どうして?
すっかり昨日の出来事を忘れていたアレンはパニックに陥りながらも状況を整理していて。
昨日雪遊びでコムイに叱られて、強引にラビの部屋に連れて来られてそのまま寝てしまったことを思い出すのはもう暫く先の事。
「もう…ちょっと、ねるさー…」
その先にラビが寝ぼけた表情でアレンを抱きしめて殴られるのはちょっとした余談。
理性の塊?実はうちのラビは結構我慢強いですよ。
つか絶対これ硬いの腰あたりにあるよね!!(まぁ下品)
難産でした・・・
話の順番としては「3.大丈夫?」よりも以前の話です。
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