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〜第58夜 時の破壊者より〜ネタバレ含む
7巻をお持ちでないかたでネタバレがダメな人は読まないで下さい
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『諦めて立てよ!!!』
守れなかった。
アレンが攫われた時、直ぐさま槌で駆けつければあんなことにはならなかったかもしれないのに。
リナリーに偉そうに大言を吐いてはみたけれど、結局あれは自分に言い聞かせる為の詭弁だ。
「くそっっ・・・」
それにリナリーの様に打ちのめされて人前で泣ける彼女が羨ましかったのだ。
自分はブックマンの後継者で、『神の使徒』ではない。
心を傾けてはならないから。
ブックマンの言葉に少しだけアレンが生きているという希望が持て、それでも今すぐ会いにもいけないもどかしさにラビは頭を冷やそうと甲板に出てみたものの、思い出すのはアレンの姿。
笑顔。怒った顔。悔しさの表情。いろいろ浮かぶけれど、一番浮かぶのはラビ自身に向けられた最高の笑顔。
「会いたいさぁ・・・」
けれど会いに行けない。
「女々しいよな・・・俺って」
こんな俺、アレンがみたらきっと呆れる。けれどアレンのことだからなんとか元気づけようと試行錯誤する。そういう奴だ。
思えば思う程、会いたさは募るばかりで、頭を冷やすどころではなくなった。
『味方じゃない』
『記録の為に』
『まぎれ混んでるだけ』
『ブックマンに』
『心はいらねェんさ』
心が急激に熱くなって。
急激に冷えて行くのをラビは感じた。
「だいじょうぶですかぁ?」
蹲って膝を抱えていたラビに声が掛けられた。誰か甲板に出て来たのだろうかと思い、はっとして頭をあげた。
やけに間延びした声と共に現れた子供は一体誰なんだろう?とラビは考えた。
「えーと・・・?」
この船にこんな子供が乗っていたことが不思議だ。もしかしてノアの一族か?とラビは緊張に鎚に手をかける。
「あれ?」
しかし手を伸ばした先に鎚は存在しなかった。
もしかして落とした?
焦るが、新しい団服に着替えた後、鎚は確かに入れ直したし、自分に近付く気配は他に無かった。
そういえば、とラビは周りを見渡すとそこは甲板ではなかった。だからといって船の中でもないだろう。
ここはどこだろう?夢の中か?
「どうかしたんですか?」
「いや・・・なんでもないさ」
ラビはどうしたものかと考える。目の前の子供はどことなく懐かしさを感じさせて、危険な感じはしない。
夢の中だとしたら、ひとまず自分の身は安全だろうと思った。
ノアの一族に夢の中まで入り込める能力のある奴がいるとは聞いていない。
目の前の子供から異質な気配は感じ取れなかった。
「そうですか。良かったです」
「・・・心配してくれてサンキュな」
「いえ、当然のことをしたまでです」
にっこりと子供は微笑む。
ラビもその笑顔につられて微笑んだ。
あ、可愛いな。
ラビはその笑顔にアレンを思い出した。
良く見れば可愛い顔立ちに、茶色の髪だったけれど、どこかしら彼を連想させる面影。
だからもしかして、とラビは声を出してみた。
あの名前を。
こんな笑い方をするのを一人しか記憶してない。
「アレン?」
「はい!何でしょう?」
「マジっ!?」
「マジですよ?・・・ラビ」
「え・・・?!」
「気付いてくれて、ありがとう」
ラビ。
ラビがその名前を呼んだ途端、子供は見る間に銀灰色の髪になり、成長して現在のアレンの姿形に戻った。
夢の中だからか、その左腕は存在していた。
「アレン!!」
思わず夢の中ということも忘れてアレンに飛びつく。その身体を抱きしめて、彼が生きていることを感じ取る。
夢の中なのに、やけにリアルだと思うけれど、それ以上にアレンが生きていてくれた事が嬉しくて。
それは夢であり、夢でない現実の虚像。
「ラビ・・・心配させて・・・すみません」
「言うな!俺がもっと・・・」
ラビが何かを言う前にアレンは彼の口を塞いだ。それ以上何も言うなと目で訴えて。
「ラビ。僕も早く貴方に、貴方達に追い付けるように頑張りますから・・・だから、それまでは・・・」
「アレン・・・?」
「・・・もう戻らなきゃ・・・ラビも」
ラビの抱いていたアレンの身体が透けて行く。もっと抱いていたくてかき寄せようとしてもそれは空を抱いて。
「ラビ、死なないで。」
「!?」
アレンから掠めとる口付けと思ったら途端に周囲が白み始めた。
「アレン!アレン!!」
もっとアレンを感じていたくて叫んでもそれは叶わない。
今は。
「必ず・・・行きます・・・約束です・・・」
ラビが次に気付いた時、アクマの襲撃が自分の身に降り掛かった後。
アレンは目を開けて、夢の中で再会した「彼」を想う。
「・・・ラビ・・・」
死なないで。
僕が駆けつけてみせるから。
追いついてみせるから。
「目が覚めたかい?小僧」
そして今アレンは特訓の途中だったことを思い出し、身体を起こした。
もう立て続けに行っている為、アレンの身体の節々が悲鳴を上げていたけれど、彼らに追いつく為には時間が惜しい。
アレンが立ち上がったのを見計らってフォーが身構えた。
「さて再開だ。ウォーカー」
「ええ。やりましょうか」
アレンも今は無い左腕に力を込めるように、構えを取った。
待ってて。
End
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