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「おーい。この書類の解析の本は?」
「一番左端の山ん中、下から5冊目」
「ラビ、この遺跡が載っている図鑑知らないか?」
「それなら反対側の山で向かって右から7列目の一番下さ」
「・・・・・・」
アレンは扉を開けたことを一瞬だが、後悔して固まっていた。
「おーい、こっちのファイルお前持っていったろー」
「持っていってませんてばー」
何故なら科学班の面々が目まぐるしく動き回っていたからだ。
いや、ここが忙しいのは今に始まったことではないし、見慣れた光景のはずだ。だがどうしてかアレンの視界に入る人物が珍しく真面目な表情で机に向かっているものだから、ついついドアを閉めるタイミングを逃した。
もとより、ここには任務の話以外で来たいとは思わないのだから。
そういえば彼とは今日約束していたことがあるのを思い出した。
けれどもしかしたらその約束は守れないかもしれない。
「あ、アレン君。やっと観念して来たね?もう駄目じゃないか〜定期検診すっぽかしたろ、君!」
「コムイさ・・・ん。すみません。ちょうど任務明けでそのまま寝ちゃったみたいで・・・」
「仕方ないなぁ。とりあえずお帰り。今急な仕事が入ったから隣の部屋で待っていてくれるかな?もう少ししたら僕も行くよ」
事実、先日アレンのイノセンスとアレンのシンクロ率の検査を兼ねて健康診断をする約束になっていた。
だが、予想以上のハードな任務で教団に着くなりそのまま爆睡し、気づけば約束の時間をまるまる1日過ぎていたことに気づいたのは目がさめた直後。
偶然、その部屋にラビがこなかったらさらに眠っていただろう。
それくらい、疲れて体が休息を要求していたということになるが。
問題はアレンが寝ていた場所。
科学班の誰もが見つけられなかったという部屋で実は寝ていた。
「分かりまし・・・「コムイさ〜?それなら明日でもいいだろ?それよりこっちの仕事が先!」」
アレンの答えをさえぎったのは、ずっと机から視線をはずしていない人物。
アレンが扉を開けて見つけた『彼』だ。確か彼に見つけられたのは『資料』をとりにきたから。
確か約束をしたのはその後だ。
「ん〜そうしたいけど、アレン君のデータも提出しないきゃならないしね。一応キマリだから」
苦笑し、その困った表情で口を開くコムイはいつものように、コーヒーカップを手にし、もう片方には分厚い書類の束を抱えていた。
「いくら大元帥の命令だからって、なんでエクソシストの全データを今ごろ欲しがるんさ」
「・・・それぞれにあった任務の振り分けが目的らしいよ」
「そういうけど、アレンは教団に来てから殆ど休みなしで任務に着いているんだろ?少しは休みとってやらないと後々面倒になるさ?」
「分かっているんだけどね・・・ふぅ。しょうがないな。ラビの言うことにも一理あるし」
「え?別に僕はかまわないですよ?」
思いがけない展開に、アレンはラビとコムイの顔を見比べた。
どうやらただの健康診断というわけではないらしい。
「いーの、いーの」
「そうだね。健康診断終わったら直ぐ次の任務の説明が待っているしね。少しぐらい伸ばしてもいいかな?」
「え?じゃあ急いだほうがいいんじゃぁ」
ラビとコムイの言い分がよく分からないアレンは戸惑った表情を浮かべ訊き返す。
「いいんだよ。君は暫く休んでて。明後日からおそらく任務に入ってもらうことになるから」
それまで体を十分に休ませておいで。
さて、コムイからそう『命令』を受けてしまっては、すっかり来た意味を無くしてしまい、アレンはどうしたものか途方にくれてしまった。
ラビは忙しそうだったし、今この部屋で待っているのも邪魔になるかもしれない。
「・・・・・・えーと・・・じゃあ」
「アレン、そこの椅子持ってきて?」
そのまま扉に向かおうと思っていたアレンの背に声が掛けられて振り向くとラビの頭が見えた。
「椅子?」
「ん。そこらにあるのでいいから」
本で埋まってたならよけていいから。
「?ここでいいんですか?」
アレンは言われるがままに空いていた椅子をラビのいる隣に運んだ。
「そ。じゃあこのソファの本全部椅子に移してくれるさ?」
「・・・?はい」
アレンは忙しいラビに反論もせず黙って作業を続けた。
「ラビ、終わりましたよ?」
「さんきゅ。じゃあアレンはここに座って?」
「?」
アレンは言われるままにラビの座っているソファの隣に腰を下ろした。するとすぐ様腰ごと捕まれて強引に引張られた。顔が近い。
「ラビ?」
忙しいんじゃなかったの?
てっきり忙しくて話す余裕もないのだろうと思っていたのに。だから部屋に戻って時間がくるまで待とうと思っていたのに。
「だってアレンは俺の癒す薬だかんな♪」
「なっ・・・・・・」
忙しいんだったら、声をかけずに立ち去ろうと思っていたのに。
こんなことをされたら、動けないではないか。
「だから帰るなよ、アレン」
もうちょっと待てば昼飯食いにいけるさ。
「いっしょに行く約束だろ?」
「・・・はい」
にっこりと。
科学班の面々の視線も気にならない程、そこだけ空気がピンク色だったのは言うまでもなかった。
一方。
『イチャつくならよそでやってくれ!!』
科学班の面々は叫びたいが叫べない状況にそちらを見ないようにしていたとか。
END
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