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「シューレン氏も人が悪い。下働きだった女性との間に出来た子供を無理矢理跡取りにするなんて・・・アレン君もさぞかし心を痛めたろうね」
シューレン氏とその奥方は離婚が成立したらしい。
「そうだな・・・優しいから、アレン。ところでかなり腕にキテるさ?やっぱ最後に発動しなかったのって折れてたから?」
「うーん本来イノセンスが骨折ってみたことないけど、かなり杭で穴開けられたみたいだし、ちょっと崩れていたしね」
事件の後、シューレン氏に事の詳細を確認し、ラビと神田は黙って教団へ戻った。アレンはまっすぐ病院送りになったのは言うまでもない。しかし1晩入院した後、頑に「教団に戻りますので退院許可を下さい」というアレンの気迫に病院院長は負け、追いついたラビと神田について教団に到着直後、倒れた。
で、結局医療班のお世話になることに。今アレンはベッドの上の住人だ。
「でも寄生型ってのは精神にも左右されやすいんだよ。あ、これはオフレコでね、ラビ。それとアレン君の目が覚めたら一度連絡して。状態みたいし」
オフレコなのは神田が聞いたらアレン君に絡むの目に見えてるからね。とコムイは付け足すのを忘れなかった。そして病室を出ていった。とりあえずイノセンスの左腕の修理は終わっているから問題はない。
ラビは依然眠り続けるアレンの寝顔をじっと見つめた。コムイの言葉は僅かにラビを痛めつけて行った。
『精神にも左右されやすい』
という寄生型イノセンスを身に宿しているアレン。
それは恐らくノアの一族に一度命を奪われかけた記憶が関係しているものだと、悟って。
「俺って・・・アレン守れてないさ・・・」
あの時の心が竦む想いは二度としたくはない。
だからやや一方的に守ると誓って、恋心を頂いたまま。アレンもラビを好きだと言ってくれたけど、本当の心はまだ見せて貰えていない気がする。
「守ってくれなくても・・・いいんですよ、ラビ」
「?起きてたんか?ダイジョウブか?」
てっきり麻酔で眠っているものだとばかり思っていたからラビは今発言した自分の言葉を誤魔化した。
まるで発した言葉どおり守れなくて、またあの時の二の舞いになりそうになって、恐くなって。
「待ってろ、今コムイ呼んでくるからっ」
「ラビ、待って」
病室を出て行こうとするラビの腕をアレンは引き止めた。左腕は依然動かなかったので右腕で。右腕を使うのはいつものことだったが。
「いやさ、コムイにも言われているし」
「ラビ・・・お願い・・・です」
アレンの視線はまっすぐラビを捕らえていた。ラビは観念してベッド脇の椅子に座り直す。
「アレン、ホントにダイジョウブさ?」
「ダイジョウブです。僕こそ心配かけてすみません。もっと戦い方の経験積まないといけませんね」
「アレンは十分に戦っているさ」
「いえ、僕なんてまだヒヨっこですよ。神田の言う通りなんです」
「ユウは誰にたいしてもあんなんだから、気にすることないさ?」
「・・・」
「・・・」
アレンが硬い表情をしたラビの心を解してやろうと微笑んでみせるのだが、振れる話題が無くて、お互い黙り込む。
けれど話すべきことはある。
「あのラビ・・・」
「うん?」
アレンは意を決した。ラビはいつものラビで居て欲しい。それだけだった。こんな萎れた姿のラビを見ているとこっちまで萎れた気分になりそうだ。
「ラビはそのままで居て下さい」
「アレン?」
「無理に守ろうとしないで。それでラビが傷付くのはイヤです。ラビはそのままで居てくれるだけでいいんです」
分かりましたか?
アレンは無意識に逃げようとラビの袖を掴み、がっちり逃がさなかった。
「アレン・・・俺は・・・」
アレンが傷付くのを見たくない。それが言えない。
だって俺達はアレンは仮にもエクソシストである前に人間だ。怪我をすれば痛いし、死ぬことだってある。
アレンはその暗い闇の中に自ら足を突っ込んでいるようにさえ見える。
それをアレン自身気が付いているのかいないのか。
アレンは沈痛の表情を見せるラビに悲しく微笑んだ。
「ラビ・・・」
「アレ・ンっ!?」
ふわ、とラビの唇をまろやかなアレンの唇がかすめ取った。
初めてアレンからされたキスにラビは腑甲斐無くも真っ赤になる。
「約束、ですよ?ラビはそのまま居てくれるだけで僕は救われているんですから、ね?」
アレンは今度こそにっこりと微笑むと、ラビも持ち前の明るさを取り戻した。
「分かったさ。アレンにそこまで言われちゃあな・・・男が廃るてもんだ」
「・・・はい」
くすりとアレンは微笑んだ。ラビはその笑みに我慢出来ず深いキスをアレンに送り、リナリー達がやってくるまでそれは続けられた。
例え一瞬先が真っ暗闇でも、先へ進むと決めたから、僕は簡単に死んだりしませんよ。
けれど、アレン。どうか俺の知らない所で死ぬようなことはしないで。
お互いが想う気持ちは似ていて、違う。
闇がずっと同じものでないように。
終り
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