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「ったくお前、本当に知らないのか?アレンの居場所」
ラビの言葉に、宙を飛んでいたティム・キャンビーは首(というより身体全体だったが)を横に振って見せた。
「まあいいさー。教団内ならお前もすぐ見つけられるだろ?」
せっかくの休日だからとラビはアレンを誘ってデートしようともくろんでいたのに、アレンのいる扉を叩いてさあ出かけようと声と扉をあけたら(そこいらはラビとアレンはすでに恋人同士の仲だったとはいえちょっと礼儀が成っていなかったけれども先日の内に彼女自身から許可を貰っていたラビにとってはもう嬉しくて堪らない状況だったらしい)、そこから飛び出して来たのはティム・キャンビーが一匹。弧を描く事もなく、一直線にラビの顔面に追突した。それはもうめり込む程に。
折角私服で決めてきたのに、少しばかり汚れてしまった。
それだけで終わるのならこうして一緒にアレンを探すはずもない。 追突されてラビはすっ転んで後頭部を強打だけでなく、何故かティムは直後、彼の顔面に噛み付いて来た。
理由はわからないが、ティム・キャンピーが怒っているのは誰の目から見ても明らかだ。
「あー痛ぇ・・・まさかデートにまでついていくつもりじゃないだろうな?」
こんな調子のティムがつきっきりじゃキスなんてできやしない。横目で睨むものの、ティムキャンピーに目はないので表情はわからない。ラビの言葉にも口は有っても話す事は出来ないので返答は無かった。
「絶対ついてくんなよ?お前の録画機能使われちゃ、いちいちデートにも誘えないさ?」
今日のラビの目標はデートの終わりまでキスをすること。恥ずかしい話だったがまだ『恋人』という仲になってからアレンが恥ずかしがるのでキスは数える程度。もっとも恋人に至るまでにスキンシップと称してラビは何度もキスを盗み取っている。(どうやら恋人と恋人未満のキスは違うらしい)
「お。そっちか・・・てそっちはコムイの実験室とかしかないさー?本当にこっちなのかぁ?」
ティムキャンピーは科学班のある場所へ向かっていく。
普通のゴーレムとはちょっとばかりか大きく違うティムキャンピーの便利な機能だ。但し探せるのはティムの記憶にメモリーされた人物のみらしいが。
クロスに僅かばかりの感謝を抱きながらラビは黙ってティムキャンピーの後をついて行く。するとラビの耳に探していた本人の声が入って来た。
「でも・・・これ凄く短いですよ?恥ずかしいです」
「何言っているの、アレン君!これぐらいで根をあげるつもり?」
何故かリナリーの声まで聞こえて来た。ラビは一体どんな状況が中で繰り広げられているのかを探るべく扉に近付く。
「だってこれじゃ・・・見えちゃいます・・・」
何が?
ラビは一つの扉に聞き耳を立てた。扉に窓はついてないので中の様子は伺えない。
「いいじゃない。それくらいの方が可愛いわ。そんなに恥ずかしいならこれ履く?」
「え?ちょ・・・どこ触って・・・やぁ・・・くすぐったいです〜」
どこが?
聞いているラビは想像に顔が真っ赤だ。会話の内容で想像どころか妄想の域に達しているのかもしれない。
今、ラビの脳内ではリナリーとアレンの百合のイチャイチャが繰り広げられていた。
いやいや、今そんな想像してる場合じゃないっしょ?ていうか、リナリーは俺のアレンに何してるんさぁ?
ラビは首を振って想像を打ち消した。そして自分と同様に扉へぴたりと貼付いて動こうとしないティムキャンピーを引きはがし、扉を開けてから、叩いた。もし万が一着替えの最中だとしても自分はアレンの恋人として許される、という強引な考えがあったかどうかは知らないが。
わざとそ知らぬフリで。
「何してるんさ?リナリーとアレン?」
「「ラビ!?」」
そこにいたリナリーはアレンの足首を掴み、肝心のアレンはソファに座らされていた。知らないものがみたら、リナリーがアレンを押し倒しているようにも見えた。
が、残念。ラビは二人の知っている人物。
一瞬でラビの視線はアレンの服装を頭のてっぺんからつま先まで確認していた。
「・・・・・・アレン、可愛い格好してるさね?」
ラビはアレンの格好に視線を止めて、にっこりと微笑んでみせた。(心からの笑みかどうかは疑わしいが)内心の動揺を悟られないように笑みで誤魔化しているのを知っているのは恐らくこの場ではリナリーぐらいだろう。
「らっららら・・・らび!?どうしてここに!」
思いがけない登場人物にアレンがまず行ったのは太ももを何故か押さえる行動。何かか隠したがっているようだが、今さら無意味。アレンはずっとスカートをはかず男装して性別を隠した生活をしていたから無理もないが。
足を晒すのを酷く恥ずかしがっていることなんてラビにはお見通しだ。
そしてそんな姿を見てしまったラビもどこに視点を定めればいいのか困ってしまっていたりする。太ももが見える丈のスカートなんて履いているアレンを見るのは初めてだ。新鮮だが、スカート(というよりは太もも)ばかりを見て変態とも思われたくないと思って、視線が定まらない。
「それはこっちのセリフさぁ?お前探してたんだぞ・・・ティムもお前居なくなってるから機嫌悪いし」
「えっ!?」
ラビはどもっているアレンの緊張をほぐすべく話題を変えてみることにした。下手に機嫌を損ねては今日の計画が台無しになる。手に捕まえたままだったティムキャンピーを放してやった。
ティムキャンピーは解放された瞬時にアレンの元へ飛びつく。
「あら、思いのほか早かったのね」
そんな中、一人冷静なのはリナリーのみ。
「りなっりー!?」
まさかリナリーが呼んだとか?愕然とした表情でアレンがリナリーを見守る中、彼女は止まっていた作業を再開しはじめた。しかもラビの見ている前で。
「アレン君、じっとしてて。あまり暴れると伝染しちゃうわ」
きっぱりと言われてしまって、アレンは動こうとしていた足を止めた。仕方なしにラビを見上げる。それは申し訳ないという時の表情に良く似ていた。
「んで、リナリーとアレンは何してるんさ?アレンも・・・俺部屋まで迎えに行ったのに居ないしさぁ?」
「ごめんなさい・・・今日の服をリナリーに見立ててもらっていたんです。まだ時間あるだろうからって」
アレンは着ている服が着慣れないからもじもじしながら話すので恥ずかしいのはラビにも伝わった。そして恥ずかしいという感情は度々人に伝染し易い。だってアレンの今日の服は確かに可愛かったのだから。
「ふーん。そういうことさ?」
照れに顔が火照る。ラビはそんな照れを見られたくなくて顔を逸らした。アレンにはそれがラビの怒りをかったものだと勘違いしてしまったようで。
「リナリー、やっぱいいです。僕こういうの慣れないから・・・恥ずかしいし・・・」
二ーソックスをアレンの太ももまであげたリナリーは甲斐甲斐しくてまるで専属のメイドのようだった。
「まだ言ってるの?初めてのデートなんでしょ?だったらこれくらいの服の方が思い出になるわよ?ねぇ、ラビ?ラビもこの服良く似合っていると思うでしょう?」
リナリーはまだ躊躇っているアレンを立たせてラビの前に差し出した。これで行けという事なのだろう。
ラビは背けていた顔をアレンに戻して、手を差し出した。
「・・・怒ってないんですか?」
「怒る?なんで怒らないとならないんさ?」
ラビの言葉に、アレンはゆっくりとだが、その手を握る。
それを待っていたラビはぐいっと自分の腕でアレンを引き寄せるなり歩き出した。
扉に向かって。
「グっジョブさぁ、リナリー!じゃあアレン借りてくな?」
「いきなりお泊まりはなしよ?ラビ、女の子はデリケートなんだから!」
アレンに着いて行こうとするティムキャンピーをリナリーはやんわり抱きとめ、リナリーはお姉さんのように忠告した。
「りなっ・・・」
『お泊まり』言葉にアレンは真っ赤になってリナリーを振り返る。ラビは笑っている。
「ラビぃ!」
「あはは、今さら戻るはなしな、アレン。さーデートするさ?」
恥ずかしがるアレンをラビは可愛いと思って。
それこそ放したくはないと思った。
向かうはどこへ?
青空の下へ。
エンド
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