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夏といえば?
(そりゃ海とか山とか、アウトドア?)
ぴちぴちギャルで目の保養を!
(彼女にあきれられない程度にして下さいね)
アレンが俺の彼女じゃん。
(それは・・・そうですけど・・・)
というわけで!
(?)
これを着て俺と一緒に海に行って下さい!つーかついて来て!
(なんで僕が?)
俺の恋人でしょ?
夏って言ったら海でバカンス、海でデート!沈み行く夕日をバックに恋を語りあったりなんかしたりしてさ!
(・・・ラビがそこまでロマンチストとは知りませんでした、僕。)
アレンを待っていたラビはそれはそれは嬉しそうな笑みを浮かべるものだから、アレンも思わず見とれながら彼が脚立の上から降りてくるのを待ってました。
けれど彼の口からは飛んでもないお誘いが出てきたのです。
「なあ、アレン!このトーリ!!!」
ラビが己の目の前に両手を掲げ合わせて相手に拝みました。まさしく東洋の神頼み姿勢。しかし神田あたりに話したらそんなの神頼みなんて言わねぇ!とか切って捨てられそうです。幸い彼は長期任務についていて不在でしたが。
「だめです。そんなこと出来ません!」
「アレン様!女神様様!いっしょーのお願い!!」
「だめですってば!いやです!リナリーに頼めばいいじゃないですか!」
第一女神様様ってなんですか?神様なんて信じてませんから、僕。
「えぇ〜!?アレンのがいいのにぃ!」
なんでリナリーなんさ。俺がコムイに殺されてもいいわけ?
というか俺一生のお願いって言ってるのに、聞いちゃくれないわけ?
「だめなものはだめです!水着なんて!!」
第一この左腕、どうやって隠すんですか!無理でしょう?無理に決まっているじゃないですか!!それともなにか策でもあるんですか?
とうとうラビが根負けしたようだ。
「えー・・・?だめ?」
「だめですって!何回断ったら分かってくれるんですか、ラビは」
アレンはラビの必死のお願い(しかも土下座までしているらしい)をいともあっさり却下。
場所はラビの秘密の部屋・・・とは言っても、膨大な本の山に埋もれたブックマン専用の図書室。(これまた幸いにもブックマンは先ほどから教団上部との秘密裏の会議に入ってしまったから当分戻ってはこない。)
しかも教団の一部の人間しか入室は許可されていない場所。
「アレンは俺と一緒に海に行くのが嫌なんさ?」
「そんなこと言ってないじゃないですか!なんでそう曲解するんです?」
アレンがラビと恋人同士になってからの逢瀬はほぼ毎回この場所だった。約束はその場その場で交わされるわけではなくて、ラビからの提案。アレンの部屋や自分達(ブックマンも同室だから)の部屋ではゆっくり落ち着けないだろうからと。
まだ肉体的には清い関係だったが、それなりに逢瀬を楽しみ愛を育んでいた。(こう書くととてもプラトニックに聞こえるが、この話が短編のため省略気味に書かれているからである)
今日も同じようにこの場所に落ち合っていた。
アレンに至ってはたった今任務から戻ってきたところだった。
少々お疲れ気味も手伝って、なかなかラビのお誘いには乗りにくい心情らしい。
「ちぇ〜普通の恋人同士みたいなことやろうと思ってたんだけどなぁ・・・残念」
「だからそういうのが楽しみたいならリナリーとか他の団員の女性を誘えばいいじゃないですか。ラビならもてるんだし・・・」
「・・・アレンはそれでいいわけ?」
言ってから失礼な言い方だと気づいたアレンだったが、ラビには直ぐに切り返されて、その返事には皮肉が含まれていた。
恋人であるラビに他の女性と浮気しろと言っているような喩えだった。ラビがそんなことを出来ないと知っていてそんなことを言うのだ、アレンは。
「・・・良くないけど、仕方ないじゃないですか」
「俺だって良くないさ。折角夏が来たらアレンと二人きりで出かけるよう計画練ってたのにさ」
しかも丁寧にアレンの分の水着まで準備していたのには、さしものアレンも驚きだった。
「すみません・・・でもそんなに海に行きたかったらやっぱり別の人を誘って下さ−」
アレンはそれ以上言えなかった。ラビの射抜く視線に貫かれて。
「俺は・・・アレンがいいんさ!他の子じゃなくて、アレンの水着が見たいの!俺は!!好きな子の水着が見たいのって普通だろ!」
「・・・///っ」
ラビの思いがけない言葉に、意味を悟って顔を朱色に染めてしまったアレンがそこにいた。
ラビはいつも茶化した表現が多いから、時折見せる真摯なしぐさや表情と台詞にどきっとさせられる。
アレンはラビのこういう表情に弱かった。
「ラビは・・・どうしても僕と行きたいんですか?」
「ああ!行きたいさ!!」
確認してみれば予想通りの返答。かなり力強い言葉が返された。
「どうしても、その水着じゃないといやですか?」
「・・・え?もしかして行ってくれ・・・るんさ?」
「まだ何も言ってませんよ?どうなんですか?」
水着。
何故かラビの手にはいつのまにか準備されていた水着(しかもアレンの分)が握られていた。
いったいどんな顔をしてこの水着を買ったのかと思う。アレンは自分で水着を買ったことはない。
しかもその水着はちょっとアレンには敬遠したくなるタイプの水着だった。
黒ビキニ。
「この水着がいいんさ!」
出来ればさ!
「・・・ラビのすけべ」
やっぱだめです。却下します。
「えぇ〜〜〜〜!!?」
ラビは酷くこの世の終わりかと思える程大げさに嘆いて見せて声を荒げたのだった。
え?終わり?
おまけ(ラビがあまりに報われなくて可哀相だったのでちょっとだけよ?)
ラビは未だにいじけていたりする。アレンは黙って苦笑の表情で見つめていた。
「折角ヴァチカン所有の保養所でいい海岸見つけたのになー」
「・・・ラビ(保養所?そんなのあるんだ・・・)」
それは今初耳だった。
「折角せっかく、その保養所でアレンと二人きりでデートしようと思ったのにさ」
見ればその背中には哀愁。指先は「の」の字を描いていた。この季節湿った空気が余計鬱陶しい。しかしそんなことを言ったらさらにいじけるのは目に見えて明らかだったのでアレンは黙ってその背中を見つめた。
「・・・」
「折角折角せっかく、知人に頼んでアレンにぴったり似合う水着選んで貰ったのにさー」
ラビはしつこく続けていた。
盛大にいじけて見せられて、アレンもいい気分ではなかったからなんとか譲歩したかったが、相手は海だ。
アレンは絶対に左腕をさらしたくなかったから、ラビの申し出を受け入れられなかった。
この暑いさなかでもアレンは半そでになることはなかったのだから。
「折角誰もいない入り江だったらアレンも乗り気になってくれると思ってたのになぁ〜」
「ラビ・・・しつこい男は嫌われますよ?いい加減機嫌直して下さい」
「どうせ俺はしつこいさ」
「もうっ・・・仕方ない人ですねぇ」
アレンはせめてものお詫びにとイジケテ座りこんでいたラビの頬に唇を落としたのだった。
「っ!?」
「水着は勇気がないので着れませんけど、いつか一緒に行きましょう」
海に、ね?
「ああ!」
おちなし!
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