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この時期外れな中、アレンは熱を出して寝込んでしまっていた。
傍らには看病をしているラビ。アレンが寝込んだ原因など分かっているが、知らない者が見たら『馬鹿』呼ばわりするであろう季節は夏。
だが、アレンが倒れたのはここ任務続きでまともに休養が取れなかったのと、遠征していた先でまともな食事にありつけなかった疲労でとうとう身体にガタがきてしまったらしい。幸いにもアレンが倒れたのは医療施設が整った教団についてからだったが、事情で医務室を使うわけにはいかなかった。
実は。
アレンが女性であることを知る人間は教団でもほんとに一握りで、指折り数えても指が余った。
そしてアレンの性別を知る数少ない女性で、肝心の頼みであるリナリー嬢は今任務に着いたままでまだ帰ってこれないらしい。
アレンの熱は思っていたより高くなかなか下がらない。だから恋人に昇格したばかりのラビがその役を買って出ることになった。
ミランダに頼もうかと思ったが、生憎彼女も任務で先日出ていったばかりだからだ。
「困ったさ・・・なんでこんなときに限って二人とも任務なんさ〜?」
きっとここにコムイやブックマンが居たのなら即答で『数少ないエクソシストなんだから仕方ないでしょ(あるまい)』とか返されるに違いないのだが。
しかもアレンの秘密を知っている医務室の数少ない人間も今は学会に行っていて不在だという。教団という特殊な場所で仕事をしていても学会というのは貴重な情報と意見の交換場だからか、外せないものらしい。
「アレンってほんとアンラッキーさね・・・」
先ほどからマメに額のタオルを取り替えてやっていたら洗面器の水があっというまにぬるくなってしまったので、取り替えようと席を立ち踵を返そうとしたのだが。
「おぉっっと・・・」
ぐいんっと後ろに引っ張られた形になったラビはなんとか転ぶのを防いで踏みとどまった。まだ洗面器を持っていなかった為床に水をこぼすこともなく、助かった。
「・・・アレン・・・」
振り向いて見ればアレンがラビの裾をつかんでいて、離そうとしなかった。その目が焦点を結んでいないのは直ぐ気づいた。
おそらく熱で半覚醒の状態なのは察しがついた。
「やだ・・・」
「アレン?どうしたさ?」
「行かないで・・・」
「・・・」
熱で潤んだ瞳で見上げられ、その上はだけたパジャマの襟から除く桜色に染まった肌が、ラビの本能に揺さぶりを掛けて理性を飛ばそうとする。
「・・・(ごくり)」
健全少年のラビの事、好きな子のそんなあられもない姿を見せられて生唾飲まないはずもない。
「アレン・・・」
けれど相手は病人なのだと、その手を掴んで気づく。異常な熱をそこに感じた。
「ほら、ちゃんと寝ないと治らないさ」
どうしても、その熱を感じてしまったら手を出すのは躊躇われた。上掛けから出された細い腕を中に戻してやる。
アレンはその間もずっとラビから視線をそらさない。もっともラビ自身を捕らえているのかといえば否、だろうが。
「いい子にしているから、おいてかないで・・・」
「アレン・・・」
やはり熱でまだ現実には戻って来ていないのがその台詞で伺えた。いつものアレンならこんな台詞や表情を見せることはない。
この子が送った子供時代を知る者はもうこの世にはいないのだろう。
けれどアレンはまだ覚えている。
記憶は消せようがない。思い出すのに時間がかかるけれど、しっかり脳に刻み込まれているのだ。
アレンもそんな一人。
「ずっと一緒だから、ゆっくり休むさ」
「・・・うん・・・」
寝入ってしまった少女に悪戯心なんてどこかに吹き飛んでしまったから、ラビの笑みは優しく慈愛に満ちていた。
ただ安らかに眠って欲しいと祈りを込めてその額にくちづけを落とした。
その祈りが通じたのかどうかは知らないが、少女の寝顔は穏やかなものだった。
ずっと守ってやりたいと思える程、彼は少女に囚われていた。
end?
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