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このお話は全くパラレルです。
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邂逅し合う二つの心
少女は最愛の養父を失った悲しみから立ち直りつつあるようにみえた。
けれどそれは表面だけで。
完全に癒えてはいなかった。
「う・・・起きなきゃ・・・」
メイドたるアレンの朝は早い。まだここに来て数週間程度だが、早くも仕事の厳しさにアレンの身体が根を上げはじめていた。
本来なら風のむくままに旅をして芸人として生活していた身分のアレンにとって早起きは苦手なものであったが、そこらへんは若さでカバー。目覚ましが無くとも起きられるまでには習慣づいていた。
が、最近眠りが浅く、寝付くのは決まって朝方。アレン自身、原因は分かっているものの、こればかりは自分で解決しなければならないことも分かっていたから。
ぐぐっと身体を伸ばして、襲い来る睡魔から逃れるべく、寝具からオサラバするべく、飛び出した。
「ねむい・・・けど。起きなきゃ」
軽くストレッチをして身体を解す。少しだけ睡魔が減退した。
これから一日頑張る為に顔を洗い、髪を梳かし、身なりを整えて朝食の準備をすべくキッチンに向かった。
「おはようさー」
「あ、おはようございます。坊ちゃま」
自分から声をかけようと思っていたのに、ダイニングに入って来たラビに声を掛けられてアレンは一瞬慌てた。
「今すぐ食事お持ちしますね」
「んー・・・」
幸い今日の準備はギリギリで間に合った。明日はもっと早く起きなければ。
アレンはそう思いながら作った食事をテーブルに並べていく。
まだ自分よりも眠そうなラビを見て、ちょっとだけほっとしながらラビの後ろに下がった。今のラビなら自分の酷い顔に気付かれずに済むだろう。アレンはそんなことを考えながらラビの食事が終わるのを待った。
しかし今日は僅かに違っていた。
「アレン」
「はいっ・・・あ、なんでしょう?」
朝、いつもなら食事中に声をかけられることなど記憶になかったアレンは一瞬自分が呼ばれているのを認知出来ず遅れて返事をした。なにか不手際でもあったのだろうかと危惧しながら。
「そんな緊張しなさんな。ここには大分慣れた?」
アレンの顔にそんな事でも書かれていたのか、ラビは苦笑して見せて訊いて来た。少女はラビに気づかわれたのが恥ずかしく、また顔を見られてしまったことに羞恥心さえ湧いて、俯いて答える。
「ええ。有り難うございます。だいぶ・・・慣れました。坊ちゃまもミランダさんもよくしてくれて、もったいないくらいです」
「そっか、ならいいんだ」
「はあ・・・」
アレンの返答に対するラビの態度は微妙。いつもと違って歯切れが悪い。どうしたのか、と心配したが、恐らくこの歯切れの悪さでは問うてもはぐらかされるだろう。
アレンは終わった食事を下げながら訊ねてみることにした。
別の話題を。
「そういえば坊ちゃま」
「なに?」
食後、外を眺めるのはラビの日課らしいことをアレンは最近発見した。アレンが声をかけるとラビは珍しいという表情と嬉しそうな表情が合わさった顔で振り向いた。ラビも殆ど一人でこの大きな屋敷で過ごすからか、話し相手がいるのが嬉しいらしい。
「まだ僕、お館様に会ってないですけど、いつ頃お戻りになるんですか?」
「・・・じじいはあと数カ月は戻ってこないさー?」
アレンがブックマンの話題を持ち出したら、ラビは途端に不機嫌になった。
あれ?地雷ふんじゃった!?
そういえば、とアレンは思い出す。ラビから『じじい』の単語が出る時、自然口調が強くなっていることに。しかしここではラビが主人なのではない。ブックマンが主人だ。
「そうですか・・・分かりました」
その主人が不在のまま仕事をしていてもいいものかとアレンは不安がったが、今更だ。次の仕事に移るべく再び作業を始めた。
そんなアレンをじぃっと見つめるのはラビ。
「あ、そうだ。アレン」
アレンがダイニングからカートを運び出そうと扉に向かった時、声がかけられた。
「はい?」
ふりむけばラビがすれ違い、ダイニングから退出するところだった。脇を通り抜けて。
「具合悪くなったら、無理すんなよ?暫くミランダもこれないからってさ?」
「え・・・?」
ぽん。とラビは通り過ぎる際にアレンの頭を軽く叩いて、立ち去った。
残されたアレンはラビの言葉の意味を考える。
それは僕の顔色に気付いたから?それともただの気遣い?
どちらの意味でも嬉しかったのだけれど。
今のアレンにはどうにも出来なかった。
傷はいずれ癒える。けれど時間がかかる傷も決して少なくはないから。
終り
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