D.Gray-man


秘めコイ 番外編4




 このお話は全くパラレルです。


















































決意する少年は宿命の中でもがき始める
 



「あれ?アレンは?」
 カートを押して入って来たのがアレンで無いのを知り、ラビが不思議な表情をしてミランダに訊いた。
 するとミランダは言葉を濁してラビを見遣ったので何かここでは言えない理由だと悟り、それ以上追求はしなかった。そういえばここの所少女の顔色が悪いのをラビは思い出した。

 ミランダが下がった後、神田が口を開く。 
「ほらよ。今月の分」
 神田は分厚い紙袋をラビに投げ付けた。ラビも慣れたものでそれを難なくキャッチする。
「毎回悪いさね、ユウ」
「名前で呼ぶなって言ってんだろ?それにこれは取り引きだから別にそんなこと気にしてねぇよ」
「そっか。うん。サンキュ」
「ところであのモヤシはなんなんだ?随分変わった奴を雇っているじゃねぇか」
 神田の口振りとその表現方法にラビは何のことだと神田を見返した。けれどそんな新人、彼女を置いて誰もいない。ミランダを雇った時もなんやかんやと言ってはいたが。

 けれど「モヤシ」ってなんさ?「モヤシ」って?

「モヤシ?あの女の子の事?」
 ブックマンの屋敷で性別が女なのはミランダとアレンのみ。
 そしてミランダは成人していたから『女の子』では表現しない。ここでいうラビの『女の子』はアレンだ。
「他に誰がいるかよ。あんなひょろっちぃの。白いしな。ぴったりじゃねぇか」
 神田にとってはイメージどおりらしい。
 白くて細くてちょっと押せば折れてしまう、そんなイメージ。だとでも言いたいのだろうか?

 ぶはっっ。
 ラビは神田の表現に思わず吹き出した。我慢出来なかったらしい。
 
 「何でそこで笑うんだ?」
「・・・っっくっくっ・・・だってユウ、相変わらず人の名前覚えるの苦手さー?」
「・・・うるせぇよ!」
 神田は真っ赤になって叫び返す。ラビの言うことは的を得ていたので尚一層悔しがる。
 痛い所を突かれたが、神田にとって人名を覚えるのは学問の二の次らしい。代わりに秀でているのは剣術。
「けどアイツ・・・俺達より年下なんじゃねえか。大丈夫なのかよ?」
「大丈夫っしょ?パンダじじいはなんも制限設けてないんよ。それに何か言って来ても俺が守るさぁ?」
「・・・ふん。随分気に入ったもんだな・・・」
 ラビがそういうのは言い方をするのは珍しい。余程毛色が違う少女がラビのお気に召したのか。しかしラビは毛色が違う程度でそんなお気に入りを増やすタイプではないのを長い付き合いで神田は知っている。

 一体どの位長く持つもんだか、知らねぇが。第一俺には関係ねぇ。


 後にアレンを中心に世界が周り始めるなんて誰が想像出来ただろう?


「じゃあ俺は帰る」
「えっ?もう帰るさ?」
 折角アレンを紹介しようと思っていたのに。

 神田はそんなラビの呟きに構うこともなくスタスタ歩き出す。
「これでも俺は結構忙しい身なんでな。お前だって今はのんびりしているみたいだが3年後は分からないぜ?」
 それはラビの内情を少なからず知っているからの助言。
「・・・そうさね。けど俺は最後まで足掻くさ。今の生活結構気に入っているからな」
「・・・お前なら・・・出来るかもな」
 神田にしてみたら、そうして堂々と足掻きを見せるラビの潔さと強さが羨ましいとさえ思っている。口には決して出すことはないが。
「そりゃどうも♪」
 ラビはにっこり笑って返した。神田は口は悪いが、信頼は出来る数少ない人間で。だからこそ付き合いが長い。
「じゃあまた来月来る」
「よろしく」

 どういうわけか。
 そうして見送った神田が数分後、再びラビの前に現れる。 
 まだ客間にいたラビは神田からの封筒を開封しようとしていたところで。
「あれ?ユウ、忘れ物さ?」
 ラビは神田の真剣な表情に何があったのか訳が分からないという問いを出した。
 神田から返って来た言葉はラビの神経に触れた。
「おい、モヤシの奴が洗濯干場に居たんだが・・・」
 アイツ、倒れているんじゃねぇのか?
「え・・・?」
 ラビは神田やミランダの見ている前でアレンの元へ走った。血相を変えて。
 同時に考えたのはもっと気をつけてあげていれば良かったという思い。
 よく考えたらたった一人の繋がりを失ったばかりの子供だったのだ。

 玄関より近い通用口から出て、庭に回り込む。
「アレン!!」
 ラビが駆け付けた先には、洗濯物を干している途中で倒れたのだろう少女の身体がシーツの上にあった。
 ミランダと神田が後から駆け付けてくるまで、ラビは酷く狼狽えていた。

 幸い、寝不足から来る過労ということでアレンは暫く休ませる事になった。

「・・・随分な取り乱し方だったな、ブックマンJr.?」
 神田の方が余程冷静で、自分より跡継ぎに適しているのではないかとラビには思えて来た。彼に記憶力を求めても無駄だろうが。それに今の自分はブックマンになる以外運命は変えられないのに。
「・・・うう。面目ないさ」
「・・・俺はそういうのは嫌いじゃないけどな」
 神田がポツリと漏らすように述べた言葉はラビの鼓膜をしっかりつついていた。
「ユウ・・・」
 何よりも、定められた宿命に立ち向かおうとするラビの瞳が先月会った時とは明らかに違っていた。
 強くなったその色が。





 終り
 
 

 

次で一端一区切り
でも番外編書き終わってなかったり

 

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