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このお話は全くパラレルです。
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少年と少女の道は交差する
あれ?・・・僕、どうしたんだっけ?
アレンは遠くでラビとミランダの声を聞きながら意識が浮上するのを感じていた。
しかし身体が言う事を聞いてくれず、瞼が開かない。
「・・・では本当に大丈夫ですか?」
明日までこれませんけど。
これはミランダの声だ。そんな時間なのかとアレンは時計を見ようとするのだが、意識だけが先走っていて徒労に終わる。
「ああ。それくらいは出来るさ。ミランダが来る前は一通りやってたんだし。それよりミランダだってこのあと約束があるんだろ。大丈夫だって」
アレンの看病ぐらい俺にも出来るさ。
それはラビの声。
アレンは自分が倒れた事を思い出した。そして身体が動かないもどかしさに焦れてきた。しかし依然力は入らない。
無駄に力むと後が辛いけれども。
「じゃあ失礼します。明日なるべく早く参りますね」
「いつもどおりで大丈夫。何かあったら連絡するから」
「はい」
アレンの身体の自由が利かない間に、そんな会話があって、扉の閉まる音がした。
音に身体が覚醒したのだろう。漸く身体を動かす事が出来た。
やけに重く感じる身体をもどかしい思いで動かし、ラビがいるだろう方向へ首を巡らす。
「坊・・・ちゃま?」
「あ、アレン。目ぇ覚めた?」
声を出せばひどく掠れていて、まるで自分のものではない気がした。アレンの呼びかけにラビがベッドまで歩いて来て顔を覗き込んで来る。その表情にアレンは迷惑をかけてしまったのを感じ取り、申し訳なく思った。
「大丈夫か?どこか痛い所とかないさ?」
「ない・・です。あの、僕どのくらい眠ってました?」
「んー大体半日近く?今は夜の七時」
「しっ!?七時!?大変!」
「わ!?まだ寝てろって!」
アレンは現在時刻を耳にして勢い良く起き上がる。そんな長い間倒れていたとは知らなかった。
しかし起き上がるまでには至らなくて。
肩がベッドから離れたところで、ラビに肩を押さえられた。
「でもっ・・・仕事がっ」
「そんな状態で仕事してもまた倒れるだけさ、アレン」
第一真っ青な顔色で。
ラビに指摘され、窓に映る自分の顔を見た。外は暗くて自分の顔色なんて判別出来なかったが、ラビに認められる程だからはっきりしているのだろう。
周りに迷惑をかけないようにと思えば思う程、それはぬかるみにハマって行くのだと自己嫌悪した。
黙り込んでしまったアレンを、ラビはどう思ったのか、ため息をこぼした。
「ダメさー自己管理はきちっとしないと」
「はい・・・気をつけます」
「今度このようなことになったら、俺にも考えがあるから」
それはラビにとっての思いやりだったが、アレンには強すぎた言葉で、びくりと肩を揺らしてラビを見上げた。
「・・・クビですか?」
その瞳に光る透明な粒にラビは慌てた。実際泣いてはいないが、寸前の表情で。
「そんなモンじゃないよ!・・・たださ・・・俺もいろいろ考えていたから・・・」
「え?じゃあ一体・・・なんですか?」
慌てて起き上がるアレンをラビは寝てるように抑える。
「寝てろってば!言っただろ?」
「・・・すみません。でも・・・寝ていられないです」
変に頑な性格だからか、再び起き上がろうとするアレンをラビがやんわりと押さえるが、今度は引かない。
仕方なくラビが折れて、アレンはベッドに座りなおした。
そんな強情さは嫌いではないけれど、時に自分を追いつめるのをラビは心配している。
「すぐ謝るのも悪いクセさね、アレンは」
「・・・す−」「謝らなくていいから!」
苦笑して見せるとアレンは謝ろうとしたが、ラビはその言葉を遮って、微笑んでみせた。
「坊ちゃま?」
少女に足りないものは何だろうと最近ラビは考えていた。
こうなる(アレンが精神的に参る)ことは予想出来たはずだった。
たった一人の縋る人間が居なくなってしまったら?自分だって、アレンと同じようになるのだ。
養父を亡くして一人きりになってしまった少女に自分が何かしてやれることはないのかと。
そんな風に思う事自体、ブックマンの道から遠ざかるというのに。
止められはしない。
だから決めた。
「決めた。アレン!」
「はい?」
「俺と二人きりの時は名前で呼ぶ!これ命令さ!!」
「めっ・・・いれい!?・・・そんなこと出来るわけないです!」
そう出来るわけがない。身分上の形式で彼は貴族ではないが、自分は一介の雇われ人だ。
アレンは思ったが、ラビの意志は固そうだ。
「家人のいう命令は絶対なんだぞ、アレン。知らなかったっしょ?」
ラビの浮かべている表情は悪戯の笑みだ。短い期間だが、それが彼の性格であることを知ったのはつい最近だ。こんな柔らかい表情をするクセに、拒否をする時は頑固。
くらり。
アレンは目眩を感じた。倒れた所為ではなく、ラビの台詞に。
しかしラビは凄く嬉しそうだ。表情にアレンが折れたのを見越している。
「俺達、家族みたいなモンじゃん」
「そっそれはー・・・」
ラビは両親がいない。
祖父という形ではいるが、殆ど館には不在で。アレンも育ててくれた養父が亡くなった時点で、身寄りはない。本当の両親さえアレンを捨てたというくらいだ。
確かにアレンもラビも似た境遇だろうが(両親が居ないという点では)、ラビはこの館の跡取り。決してアレンが呼び捨てにしていい人間ではないと少女は知っている。
「俺言うの忘れてたけど、メイドはウチじゃハウスキーパーだから、執事とか存在しないし、アレンやミランダの事、メイド扱いしないからな」
仕事上はメイドみたいだけど。
「えっ・・・?」
それは初耳だとアレンは心底驚いた表情をラビに返した。
ではミランダは?自分は?今の今まで知らなかった事実。
つまり。
「だからアレンと俺は家族同然。な?」
メイド(下働き)ではなくアレンは住み込みハウスキーパー。言葉遣いは同じだろうと呼び方は違って来る。
「な?って・・・それじゃ・・・」
「アレンの苦情は受け付けないさ。ミランダは通いだから微妙に違うけどさ」
アレンは初めから自分が住み込みで働いているから気付かない。
強制的に連れ込まれたこの場所でずっと働かせて貰う代わりに住む場所を提供して貰うと考えていたから。
「・・・アレン」
「・・・分かりました。努力・・・します」
ラビはやたらご満悦顔で、アレンの苦情など本当に聞き入れないだろう。ここは大人しく従うべきと判断した。しかし素直に頷いても直ぐ呼べそうにはないから、『努力』という形の妥協で。
「んー。努力してな?」
アレンの性格ではなかなか無理そうな命令ではあったけれど。
「はい」
「じゃあアレンは大人しく寝るさ。顔色まだ良いとは言えないしさ」
「分かりました」
ラビの申し出がアレンにとって救いになれば、アレンの心の傷が少し癒えるだろう。
アレンは落ち着いた雰囲気に口を開く。
「坊ちゃま・・・あの・・・『考えがあるから』ってこのことなんですか?」
先ほどから気になっていた事だ。ラビはまだはっきりと口にしていない。
「坊ちゃま禁止さー。アレン?」
「・・・ぇえと・・・らび・・・?」
アレンは直ぐ訂正されて促されるとは思ってなくて、些か苦しい表情でその名前を呼んでみた。
酷く緊張してしまうのをアレンは自覚した。これから慣れることができるだろうか、と。
「うん。アレンが今度同じように倒れたらってこと?」
「そうです」
「・・・それはまだ秘密さ」
「ヒミツ・・・ですか?」
「うん」
意外。というラビの言葉にアレンは目を丸くして彼を見上げた。そんな少女をラビは苦笑して見下ろし、アレンのベッドに潜り込んだ。
「らっび??」
アレンはいきなりの行動に慌てる。隣に入って来て寝そべるラビの行動に横になっていた身体を起こしかけた。
「とりあえず今日はこのまま寝るさ」
ラビはアレンの身体を腕で抑えつけ、逃げないようにする。
「えぇっ!?でもっ」
「でももクソもないさ。決定、けってーい!」
一つのベッドで誰かと寝るなんてこと、アレンにはマナ以外覚えがなくてラビの行動には驚かされてばかり。
「決定じゃないです!」
アレンはラビとなんとか追い出そうとするのだが、ラビにとってアレンの攻撃などかわすのは容易い事。
強引なラビはそれからも度々アレンのベッドに潜り込んだのはまた別の話。
終り
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