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このお話は全くパラレルです。
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来(きた)る兄妹の嵐に翻弄される
朝から突然の来訪者にアレンは戸惑いを隠せなかった。
「やぁ。君がアレン?」
「は、はい」
初めて見る顔の二人はアレンを知っていたようだ。正確には知っているのは名前だけで、アレンの顔を見て判断したらしい。
「わ、本当に?私リナリーっていうの。こっちは兄のコムイ」
背の高い男性の隣から前に出て来た少女はアレンと同じ背格好だった。やけに目をキラキラさせてアレンの前に進みよった。
「リナリー様にコムイ様ですか?」
連絡も無しにやってきた来訪者は珍しく、アレンは扉を開けて暫く固まってしまっていた。そこへ掛けられた自分の名前に戸惑って、さらに妹のリナリーに両手を取られてアレンは恐縮するしかなかった。
「うん、宜しくね。ラビはいるかな?リー兄妹が来たって言えば分かるから」
兄側のコムイが微笑めばアレンも張りつめていた気を解いた。ブックマン不在の今、滅多に知らない客は訪れないのが幸いだったが、ラビ宛にこうして突然来客があるのも珍しいから。
「ラビ様のお知りあいですか?でしたらこちらの客間でお待ち下さい。今呼んで参りますから」
突然訪ねてこないのは以前来た神田ぐらいだ。それくらい滅多に来客がない館だった。
アレンは二人の姿格好を思い描きながらラビのいる部屋に向かう。
「いきなり来るなんて驚いたさ」
一言連絡くれれば良かったのに。
アレンに呼ばれて初めはラビも驚いていたが、リナリーの次の言葉に納得する事になる。
「神田から聞いたの。ラビが一風変わったハウスキーパーを雇ったって。でも来るなら兄さんも一緒の時じゃないとってことで今日しかなかったの。ご免なさい」
「ユウから?」
あいつがそんな口軽かったなんて意外さぁ。けどそんならリナリーが来るのは当たり前かも。
ラビは今度神田に会ったら口止めをしておこうと考えた。
「僕も今日の予定がずれちゃったからね。連絡出来れば良かったんだけど。どうせラビは一日こっちにいるだろうし」
「んー。まあな。課題たっぷり3か月先までいっぱいいっぱいさぁ」
「相変わらず缶詰なのね。たまには出かけないの?」
「気分転換ぐらいはするさ」
幼い頃から馴染みのリー兄妹と交流があったということで話は弾む。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「サンキュ。アレン」
ラビが声をかけるとにっこり微笑んだアレンと目があった。先日より顔色はすっかり戻ったらしくラビは安心した。
「ねぇラビ、ラビとアレンが良ければ私もっとアレンとお話したいわ」
リナリーはアレンの姿が見えたのを待っていたらしい。
「俺は構わないさ。アレン、ちょっと時間大丈夫か?」
大丈夫ならここに座れという意味なのだろう。ラビが自分の隣を指し示していた。
「はい。少しなら」
今日はミランダが休みということで、これからまだ仕事が残っていたがそれ程急ぎのものではなかったからアレンは従った。
席に座ったアレンにまず質問したのは兄のコムイが先。
「あ、アレン君はいくつなの?随分若いみたいだけど」
「12歳ぐらいです。正確な生まれが分からないもので。すみません」
アレンの返答にリナリーは少し驚いた表情を返してきた。
「そうなの?じゃあやっぱり近かったのね。私は13よ」
「正確なってことは・・・」
リナリーとコムイは深い事情を知らないから、つい聞いてしまう。
「僕、親に捨てられたんです」
アレンもあまり気にはしてないが、聞いていい気分ではないだろうと思いながら説明する。
「あ・・・ご免なさい」「アレン君・・・」
「いえ。気にしないで下さい」
先に謝ったのはリナリーで。コムイは言うタイミングを逃したらしい。心配そうな表情でアレンを見つめていた。
「コムイ様も。僕親には捨てられたけど、とても優しい養父には巡り会えましたし、いい思い出なんです」
アレンもリー兄妹が自分をそういった差別の目で見ないことは扉を開け、話した時点で分かっていたので安心させるよう微笑んで話した。ラビは口は挟まないがアレンを心配している表情だ。まだ養父を亡くした傷が完全に癒えた訳ではない。
けれど傷は癒えて来ているのをアレン自身知っているから、微笑む。
そしてリー兄妹も、その笑みに安心した。
「アレン」
「はい?」
リナリーが少女の名前を呼んだ。
そして突然とも言える申し出。
「私と友達になりましょう?」
「え?」
アレンは耳を疑った。
「僕からもお願いするよ。」
「なぜ?」
そんなつり合わないようなことを。
アレンは自らを卑下するクセがあるのか、平等の関係を望まれても手を差し出せない。
「アレンと友達になりたいから」
「ともだち・・・」
考え込んでいたアレンの前にいつの間にかリナリーが立っていた。
リナリーがその両手を取ろうとすると、アレンは何か思い付いたようにハッとした表情を見せて立ち上がった。
「・・・すみません。失礼します」
慌ててその部屋を立ち去ったアレンに唖然としたのは3人とも同じ。
「え?あ・・・」
リナリーは追いかけたそうだったが、アレンの背中が全部を拒否しているように見えて足が止まっていた。
そんな妹の様子を冷静な視線で見守りながら、コムイはラビに問う。
「・・・何かあるのかい?」
「いや」
ラビは返答してから、アレンが己の手袋をはめた左手を見て様子が急変したことに気付いた。
「・・・でも、まさか・・・」
「ラビ。何か心当たりがあるのね?」
ラビの様子に素早く反応したのはリナリーだった。行き場の無い手は目的を失い、宙を彷徨い、両手を合わせて収めた。
「・・・アレン・・・さぁ」
ラビは言うまいかどうか悩んだが、リー兄妹の強い視線に根負けした。
「一体何気にしてるのさ?」
テラスにいたアレンの姿を見つけ、ラビは背に声をかけた。アレンは洗濯物を干し終わったところで。テラスで栽培している植物の水やりをしていた最中だった。
「何の事ですか?」
アレンの顔は見えない。振り向かないから。思っていたよりそちらの傷は深いということにラビは気付いた。
けれど少女がそのままでは未来を選べなくなる。それはラビにとっても悲しいこと。
「アイツらは左腕の・・・事とか気にする人間じゃないよ?」
なるべく刺激を与えないように諭しているつもりでも、アレンにとってそれらは全て『異端』のものばかり。
「だって僕の姿はどこから見たっておかしいじゃないですか!」
左頬の傷。
赤い左腕。
そのどれをとっても、『呪われた子供』と言われるものばかり。
けれどそれを指摘したのは何も知らない大人とその子供達。
アレンだって好きでこんなナリではないのに。
「アレン。恐いのか?」
振り返って叫んだアレンの瞳には涙。それは流れ落ちることはなかった。
「ちがいます」
「違わないだろ?」
「いえ、本当に・・・僕なんか・・・」
「ストップ。そういった卑下の感情は自分をみじめにするだけさ。直した方がいい」
「坊ちゃま・・・」
「それにさ。アレンにとっても友達が作れるのは嬉しいことだろ?」
「それは嬉しいです。けれど」
それは長く続いた試しが無かった。だから多くを望まないことにした。自らの戒めとして鍵をかけている。
「アレン、じゃあ俺の右目のコレは?」
「それは・・・っ」
試しに出してみたラビの片目には黒い眼帯が嵌められている。アレンは聞いた事こそないが、ラビの片目と自分の格好は別物だと考えていた。そしてラビにそんな台詞を吐かせてしまったことを後悔し、口ごもる。
更に、気まずくて視線を逸らしてしまった。
ラビはアレンが黙り込んでしまったことに苦笑する。
そんな風に人を気遣えること自体、貴重だと教えてやりたいと思う。
「俺はさ、アレンの事好きだよ」
ナリなんて関係ない。
「!?」
突然の告白にアレンはラビを見た。そこにあった笑顔に少しばかり照れが入っているのを見つけて、それはアレンに伝染した。
「リナリーもコムイも・・・ユウも。皆アレンの事気に入ってる」
アレンは知らないだろうけど。
「ラビ・・・」
彼の言葉は不思議とアレンの胸に滲みて行く。すんなりと耳に入るのが不思議な程。
「アレンはさ、もっと欲ばっていいんさ?今まで我慢して来た分も」
「ダメです!そうして・・・今まで・・・」
何度も諦めさせられた。欲張った後。
「俺が手伝うさ?だから怖がるなよ」
ラビの手が差し出されて、今度こそアレンは観念した。
「・・・本当に?」
「約束するさ」
ラビの言葉に、アレンは手を差し伸べた。
彼の手に乗せるようにして。
後にラビに腕を引かれて戻ってきたアレンはリナリーの申し出に訊き返す。
「リナリー様。僕なんかで本当に宜しいんですか?」
それに対し、リナリーは嬉しそうにその手を掴み引き寄せた。
「アレン君だから、友達になりたかったの。どんな姿でも、ね?」
「・・・ありがとうございます」
リナリーの言葉に嘘は存在しなくて。
アレンは少しだけ嬉しさに涙した。
終り
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