D.Gray-man


遅れてやってきたHalloween(0.5)
 




「くれぐれも感情移入をするでない。解ったな?」
 お前はエクソシストである前に、ブックマンの後継者なのだからな?
「・・・・・・」
 朝、目を覚まして言われた一言にラビは暫く沈黙を返したのだが、ブックマンが返事を急かすのでつい答えてしまった。

「解ってるさ。パンダじじぃ」

 最後の一言に、勿論ケリが飛んで来たのは言うまでもない。


















「・・・なに辛気臭ぇツラしてんだよ」
 酷ぇ顔。
「やだなあ。ユウちゃんに比べたらまだまだ俺っちはマシさぁ?」
 それに男度がアップしたでしょ?
「・・・俺が今六幻を持って来てないことを感謝するんだな」
 ブックマンの部屋前に立っていた神田ユウは、扉を開けるなり見えたブックマンジュニアの顔に向かって言った言葉はとても友好的には思えないものの、ブックマンジュニアのラビもそんな神田の台詞には慣れていたから次の瞬間には言い返していた。
 ラビの言い返しに神田も更に言うが、本来の目的は喧嘩する為に来たわけではないのを思い出し、脇に抱えていたハードカバーの本をラビに向かって差し出した。
「本、返しにきたぜ」
「わざわざサンキュ。面白かった?」
「お前のお勧めにしてはマトモな方だったな」
「おぉ。なら続き貸す?」
「いや少し休む。明日か明後日あたり任務が入りそうだしな」
「ふーん。じゃあ戻ったら読めるように出しとくさ」
「ああ」
 ラビは神田から本を受け取ると本棚には入れず、その近くに山積みになっていた本の上にそれを乗せた。元より本棚には本が入るスペースは既に無い。
 
「んで、そのツラの原因はなんだ?」
「え?」
「『え?』じゃねぇよ。今ココを開けた時のツラはとても人前に出せる顔じゃなかったぜ?」
 今はかなりマシになったけどな。
 神田のまっすぐな視線を逸らす事も出来ず、ラビは苦笑して見せた。
「うーん・・・じじぃにちょっと釘刺されちまってさぁ・・・それが思いのほかかなり深かったみたいで」
「なんだそりゃ」
「・・・ヒミツ」
 ラビは酷く困った表情をしていたからそれ以上突っ込んでも答えはしないだろうと神田は判断したものの、彼の言い方に一言言ってやりたくなった。
「キモいぞ」
「わぁ。ユウちゃんがそんな言葉使う方がキモいさぁ!」
「殺されたいか・・・!!」
 ラビにとっては彼なりのコミュニケーションだが、神田にとっては堪忍袋を揺らす言葉でしかないのを気づいているのかいないのか、定かではない。そして神田の台詞もラビにとってはからかいの材料であることを。
 そういえばやけに静かな部屋の中、気配は自分たち二人以外存在しないことに神田は気づく。
「ブックマンは?」
「会議だってさ」
「ふーん・・・ここの所ヤケに多いな」
「うん。新しいイノセンス適合者が見つからない所為もあるんじゃねぇ?」
 アレンが入って以降殆ど新人は入ってこないに等しかったし、エクソシストの数は減る一方。ノアという人種がエクソシストを消して周っている為、どうしても対策を考えなければならなかった。
「適合者はそうそう見つかるモンでもねぇからな」
「そうさね」
「最後に入った新人はモヤシか・・・」
「え?いやもっといるっしょ?ミランダとか」
「は?居たのか・・・」
 神田は初めて聞いたらしい。彼の表情と言葉にラビは苦笑してみせた。
 そしてアレンについて最近聞いた噂を思い出していた。

 教団に入った新人は自分の命を投げ打ってでもファインダーを守るらしいとか、ほかのイノセンスを保護する為には自分のイノセンスや命を投げ打ってしまうとか、いい噂の方が少ないのは世の常の理らしい。聞こえはいいかもしれないが、教団の中でその噂は決していい意味でのことことは限らない。
 その噂は聞き方によって様様。神田やラビは噂を信じる方では無かったのがアレンにとっては幸い。

 神田のその言い様はアレンを非難しているわけではないのをラビも知っている。
「モヤシ・・・ねぇ」 
 その呼び名に、ラビの表情が緩んだ。傍に居た神田もそれに気づいてからかってみる。彼が人に対してそんな表情をするのは珍しいから。これでも長い付き合いだ。
「随分お気に入りのようだな」
「うん。可愛いじゃん」
 弟みたいさぁ。
 
「・・・」
 ラビの言葉にがくりと神田は項垂れた。ラビはそんな彼の反応が掴めず首を傾げる。
「なに?ユウは何を言いたいわけ?ああ。そっかユウは第一印象から良く無かったさね。アレンには嫌われている見たいだしさ」

 初顔合わせの時、神田は警報で駆けつけ、アレンをAKUMA側の人間として殺そうとまでしたのだからアレンにとっては誤解だと言っても聞き入れてくれない彼を苦手とするのはどうしても仕方がない。
 ましてやアレンから握手を求められても神田は拒否したのだ。『呪われた』人間と握手する気はないと。

「俺だってあんなヤツ・・・」
 ムキになって言い返す神田をラビが面白がっていると知っている人物はここにいない。
「あんなヤツ?なんだって?」
 ラビは神田が心からアレンを嫌ってはいない事を知っていてわざと先を促していた。
「・・・」
「ユウ?」
「アイツを快く思ってない連中の方が遥かに多いな。上の連中にも・・・評判はよくない」
「へぇ」
 ラビは今知ったかのような言葉に相槌とも取れる返事を返す。彼がわざと自分の答えだけをはぐらかしたのには触れず。
「何しろあの色だし、呪われている所為もあるんだろうが、目立ちすぎるんだ」
 なぜか神田はアレンの噂を良く知っていた。そして何故か今ごろになってラビに聞かせた。
 ラビにもそれの本意は知らないが、黙って聞いていた。
「目立つ言ったらユウも目立っているさね」
 正反対の意味で。
「っ!?うるせぇ!今はモヤシの話だろうが!」
「へーへー」
 本当に神田ユウとアレン・ウォーカーは正反対だとラビは思ったが、言葉にはしない。今それを口にしたら今度こそ神田は部屋に戻って六幻を持ってくるだろう。そして自分を攻撃するとラビは感じとったから。
 正反対の癖にどこか似通っているのも。

 一通り、神田と自分が聞いた噂を集めて見ると、いかにアレンが危険な立場になっているかが見えて、ラビはなんだかやりきれなくなった。
「一波乱、あるかもしんねぇさ」
「・・・だとして誰に利益があるんだか知らないがな・・・」
 神田は彼を見やる。神田にとっては本当にどうでもいいことだ。自分に害が及ばない限りは。今は本当に自分の事でいっぱいで、ほかのことに構っていられる余裕なんてないから。
 そしてラビの視線がここにいない誰かを見ていることに気づく。
 周りの状況には聡い彼が、今誰を心配しているのかが見えてしまった。
 恐らくブックマンが釘を刺したのはここら辺に原因があると神田もなんとなく分かった。
 しかし今自分が手を貸せることは何もない。出来れば目の前のヤツが波乱の中にわざわざ自分から足を突っ込まないことを祈るだけ。祈る神など居なかったが。
「ラビ、お前が何を取り込もうと、何に入れ込もうと俺は感知しない。だから俺を巻き込むなよ?」
「・・・」
「悪いが、俺は自分の事で手一杯だからな」
 それは知っている。とはラビには言えなかった。
 代わりに言える言葉を探して、見つけたのは次の言葉。

「そんなつもりないさ」
 しかし言葉は声にならなかった。

 ドアをノックする音で飲み込まれたから。








END

 ・・・そして>>1 へ続くのです。
 

 

まだ解りづらいのでもうちょっと続きあります〜(過去分)

 (2006.06.04 改稿)

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