D.Gray-man


真っ暗闇の中(10)




『あーあ・・・やっちゃった。でもこれでうまくいけば3人ともお陀仏だけど、無理かな?』
 そう言いながらもう一人の子供はその空間から姿を消した。

 屋敷が揺れる響きと音波にアレン達3人は耳を抑えながら床に這いつくばった。
 立っていられない揺れが屋敷を震わせていた。
「なんだ!?」
「あのアクマの声ですよ!コレ」
「いきなり攻撃か?」
 振動に混じって聞こえるアクマの声はアレンにも解った。
 黒い闇が少しずつ薄れていくのはその場にいた誰もが解った事。

 揺れが少し収まったところでアレンが立ち上がってまだ這いつくばっている二人を促した。
「攻撃とはちょっと違うかもしれません。急ぎましょう!」
 子供の声が悲痛な訴えに聞こえて来る。
 アレンは二人が立ち上がるのを待たずに走り出した。

「くそっ・・・」
「アレン!」
 遅れを取るのが悔しいのか神田はアレンを急いで追った。
 ラビも二人の後を追う。

『ウソ・・・ノア・・・ツイタ・・・ゼンブ???』
 何かを呟きながら叫び声を上げ、それは屋敷を崩して行く。
 自我を失っている状態に近いアクマは、アレン達の目の前で自滅していた。
 けれどただ屋敷の壁に自分を打ちつけているだけなのでまだ壊れてはいない。
 このままでは屋敷どころか周りの建物まで被害が及んでしまう。
 屋敷は最早崩壊寸前だった。
「モナク・・・なぜ?」
 アレンはその状況に呆然といった表情。後から駆け付けてきた二人も同様だったが。
「チッ・・・けどちょうどいいじゃねぇか・・・このまま六幻で切り裂いてやる」
 神田は一人その表情から抜け出して六幻を発動させた。
 アレンは彼の前に立ちふさがった。
「待って下さい!」
「どけ!足を引っ張るなと言ったばかりだろ!」
 神田は六幻をアレンの鼻先に突き付けるように叫んだ。
 どかなければ突き刺すつもりだ。
「自分と似た境遇で同情か?」
「違いますよ。そもそも僕は実の親に虐待を受けたかどうかも記憶にすらないんですから」
 アレンの言葉に同情を引くような声音はなかった。
「じゃあなんだ?理由もなしにそんな事を言っているわけじゃないだろ?」
「ちょっと待ってて下さいって言っただけです!僕はあの子に訊きたいことがあるだけなんです!」
 その後は神田の気の向くままにしてもいいから。
 神田はアレンの言葉にますます憤りをヒートアップさせて、拳をふりあげた。
「ストーップ!今はこんなことで揉めている場合じゃないさ?」
 神田は横目でジロりとラビをにらみ付けた。
「ユウ、アレンの言う事にも一理あるさ。あのアクマは誰かに誑かされていた可能性が強い」
 現にただ行動するだけだったらあんな自滅したりしない。攻撃の為の力を使えばいいことだ。

「アレン、行け。お前なら訊くことが出来るだろ?」
「ありがとう、ラビ。5分だけ待って下さい」
「ふん。5分経ったら遠慮なく攻撃するからな」
 神田の言い方にアレンは不満を見せない。それが神田のやり方と知っているから。
 アレンは頷いて、アクマの元へ向かった。

 アレンは3階近くで暴れているアクマの元へ辿り着いた。
「話を聞かせて下さい!君をそんな風にさせたのは、一体誰なんですか!?」
『コワシテ・・・コワス・・・・イラナイ』
「モナク!!」
 アレンは力いっぱい叫んだ。それが生前のアクマの名前。
 アクマの皮ではない、本当の名前。
 
『ノア・・・ウソ・・・ツイタ・・・ママに会わせてくれるって・・・』
 エクソシストと人間達、いっぱい殺せばママに会わせてあげる。ノアはそう言った。
「なんだっ・・・て・・・!?」
 アレンの脳裏に浮かぶノアの人間達の残虐性を改めて思い出されて、思わず心が震えた。
 それは恐怖。彼等はアクマの命なんて軽くみているから。人間さえも憎んでいるから。

「一体どのノアが・・・」
『ナマエ・・・しらない・・』
 離れた場所で二人の会話を聞いていたラビと神田はノアの単語に反応した。
「すぐには手が出せないさ」
 何しろノアはイノセンスを無に返せる唯一のモノ達なのだ。黒の教団エクソシストの天敵ともいえる。
 それにノアは巧妙に人間に紛れ込んでいるから一度接触したことのあるものでないと分からない。分かりにくい。
「チィ・・・だから言ったんだ」
 神田は項垂れているアレンを見ながらアクマに向き直る。

「5分経った・・・遠慮なく行かせてもらうぞ」
 神田は六幻を再び構えた。アレンは項垂れている。ラビが見兼ねて鎚でアレンを引き戻した。恐らく今のアレンにこのアクマを壊すことは出来ないだろう。怖じ気づいたとかそういう意味ではなく。
『コワシテ・・・ボクを』
 エクソシストのお兄ちゃん。

 それが、モナクというアクマの最後の呟き。
 
 イノセンスの力で、モナクは消滅した。
 アレンの左目にモナクの解放された姿が見えて、事件の幕は閉じた。



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いつものアレンだったら、アクマの解放を自ら行うのに、出来なかったんです。このときばかりは。

 

 

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