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理想と現実と幻想。
「 」
「どうしたのアレン君」
「いえ、なんでもないです…気のせいかな」
医務室で応急処置の患部を手当してもらっていたアレンは時折無表情に虚空を見つめていた。
その度にリナリーが呼びかけ、意識を戻す。それの繰り返し。リナリーはさすがに危惧を覚えた。
「アレン君、ラビなら大丈夫よ。ほんとに」
「リナリー…ありがとう。リナリーは本当に優しいですね」
リナリーにしてみれば、優しいのはアレンが一番だと思っている。自分はそんな言葉をかけてもらえる程、優しい人間じゃない。優しい人でありたいと思ってはいるけれど。
だって、アレン程他人に心や身体を差し出せる人間はいない。見た事がない。
「そんなことない。アレン君がそんなだから。心配なの!」
「リナリー」
彼女の沈痛な叫びに、アレンは困惑の表情を返した。
アレンの心はここにあらずといった表情。どこか飛んでしまっているような。
何故そんな風に思うのか、自分でもよくわからないが、さしずめ女の勘という奴なのだろう。
そう恋仲の二人を当ててしまえる女の勘。
時折酷くそれがみじめな気持ちにさせられるものだとしても、知ってしまうと仕方なく思えてくるし、相手が自分の好きな人だったりすると切なささえ沸き上がって、胸を締め付ける。
自分は多分というかこの一つ年下の少年が気に入っているどころか慕情を抱いているということは自覚した。
しかも彼がラビと『そういう仲』だと気付かさせられて直後。
けれど嫌いになんてなれそうになかった。
〈大事なホームの『家族』だもの。〉
「僕なら大丈夫ですよ。怪我だってたいしたことないですし、ラビだって、僕なんかより強いんですから、そんな簡単にくたばってはいないと思ってますし」
「私が言いたいのはそんなことじゃなくて…あーもう、いいわ。これ以降は水掛け論だもの。いい、アレン君。今日は報告書も全部忘れて寝ちゃいなさい!いい?」
今はアレンを支えてあげられるのは自分だと気負っているリナリーの発言は姉のもの。
アレンは苦笑して、立ち上がった。
「分かりました。そうしまー」
しかしアレンの身体は立ち上がりきる直前、前のめりに倒れる。
リナリーが慌てて支えようにも、伸ばした腕は間に合わなかった。
「あっアレン君!アレン君!!」
「兄さん!アレン君が!」
「リナリー?」
それからアレンの意識が戻る事は無かった。
続く→4へ
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