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彼の唯一の欠点
「・・・なんでオレがこんなメに・・・」
神田はアレンを腕の中に抱きつつ教団の通路を歩く。
目的地はアレンの部屋。
なんだかんだ言いつつ歩くのはこんなお守りとさっさとオサラバしたかったから、だけではない。
「・・・バカ兎のアイツがやればいいんだ。こんなお守り」
オレはモヤシのお守りじゃない。と呟いてもダレも聞くハズはない。
そもそも神田はご飯を食べたこの後修練場に行くつもりだったから余計機嫌が悪い。
ラビにあの場所で会わなかったら、神田は真っ直ぐ修練場に行けたのに。
そして何故か彼に逆らえない自分にも憤りを感じている。
「・・・」
神田はこの不機嫌の元凶たる原因を見つめる。
アレンがそもそもあの場所で目を覚まして居ればこんなコトをしなくても良かったのに。
けれど起こさなかったのは自分だ。ラビも何も言わなかったから起こしても咎められる事は無かったのだし、自分がそこまでしなきゃならない謂れもない。
「ぅ・・・」
「目が覚めたか?」
神田が覗き込んで見れば目が閉じられたままのアレンの寝顔がそこにあった。
「・・・なんだ寝言かよ」
ちぃっと舌打ちを盛大にしながら神田は表を上げた。
しかし再びアレンの声が聞こえて、
「・・・ぃゃ・・・」
神田の足は無意識に止まっていた。
「・・・・・・」
さっさとこいつを起こして、修練上に行くべきだと。
思っているのに。
「・・・勘弁してくれ・・・」
神田はこのままアレンを談話室か科学室に連れていこうか迷い始めた。その道がアレンの部屋より近いからだ。
これ以上アレンの寝言で心情を乱されたくは無かった。
しかし更にアレンのその表情を見て神田が固まる。
怒りでもない、笑いでもない、困惑の表情に。
「お・・・」
『おい』と言いかけた神田の言葉を遮って、アレンの口から弱々しい声が発せられる。
「・・・ナ・・・一人にしないで・・・」
言葉とともに右目から滑り落ちたのは透明な液体。
「父さん・・・ご・・・めんなさ・・・」
「・・・」
さんざんアレンのことを甘ちゃんなどと言っていても、泣かれると躊躇してしまうのが神田の欠点でもあった。
女子供にも厳しい神田ではあったが、泣く子供には弱かったらしい。
ましてや、アレンも厳しい子供時代を過ごしていた一端を知ってしまった後では尚更に。
「泣くのは反則だろ・・・」
こんな所をラビやコムイにでも見つかった暁には絶対笑いのネタにされるに違いない。
神田はそれを十分に知っていたので、そのままアレンの部屋まで直行することにしたのだった。
神田の足は速いのであっという間にアレンの部屋の前。
ドアノブを回してみて、鍵がかけてないことに気付く。
『無用心だな』と思いながら扉を蹴ってあけた。
アレンをベッドに下ろしつつ悪態を並べられるだけ並べてみる。
しかし思い浮かぶのは、ワンパターンな罵倒の言葉だけ。口に出せばいかに自分の語彙が少ないか露呈されてしまう。
結局声に出したのは次の言葉だけ。神田が気にした所で場所はアレンの部屋なのだから聞かれても別に問題ないものだが、一応気にしているらしい。
「あの糞馬鹿兎野郎。後で覚えてろよ!」
ベッドの脇に腰を降ろして、頭痛のする頭を押さえた。
さらり、と黒髪がアレンの顔に、身体に落ちるが神田は自分で気づいてない。
そのくすぐったさに覚醒を促されたということも。
「・・・かんだ・・・?」
アレンの苦悶の表情から逃れていた神田を呼ぶ声に、はっとさせられた。
しまった、と思った時既に遅かった。
>>To Be Continued
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