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天使との出会い
それは一目惚れに近かった。
赤い髪の自分とは対照的な白銀の髪も印象的だったけれど、それ以上にその瞳が。
赤い髪で右顔面を仮面で覆った男は気絶したままのアレンをある屋敷に預けた。
目が覚めた時、アレンの近くには全く見知らぬ少年が座って自分を見ていた。
元大道芸人だったことで、それほど人見知りもしなかったアレンだったが、正直心の奥では驚きを隠せなかった。皆自分の事を奇異の目で見るのに、目の前の少年の視線は違っていたから。
「ここは…?」
「目が覚めたさ?大丈夫か?どっか痛いとこあるさ?」
泣き過ぎて頭が痛いのも無視して身体を起こし少年に訊ねた。頭が痛かったり、痛覚があるということは、ここは死後の世界ではないのだろう。少なくとも。
ラビは答えを返さず、別の質問を投げて寄越した。
「あなたは?それにあの仮面のおじさんは?」
アレンは最後に「大丈夫です」と付け足し、今自分の置かれている状況を知ろうと周りを見渡した。それでも知る事は出来なかったが。
「クロス先生の事か?あの人ならお前置いてさっさと行っちゃったさ?」
「…?僕…なんでここに?」
「あれ?『ここで働かせて欲しい』んじゃなかったんか?」
瞳自体は銀灰色なのに、泣き過ぎて目が赤いウサギのようだと、ラビが思ったりしたけれどそれは口に出さなかった。それも可愛かったからだとは言えなかった。そんな言える状況でも無かったから。明らかに目の前の少女は何か辛い目に遭った顔だから。
ラビの言葉に、アレンは目を見張って更に驚いた表情を返した。
「なんで…すか、それ…?」
アレンにとってこれから生きるのに必要なのは気力もそうだったが、その為にもお金を得る「仕事」が大切なのは知っていた。ただ今までマナに保護されていたから、お金を得る方法は一つだけしか知らなかっただけ。
マナの所へ行ければそんな事どうでも良かったのに。
ただ自分は彼に命を救われ、マナの所へいくチャンスを逃したことだけは分かった。
不思議と一度チャンスを逃したアレンに、今マナの後を追うという考えは起こらなかったのが幸い。
ラビはこりゃ騙されたんだな、と思ってアレンが連れて来られた状況の詳細を話して聞かせた。
ラビの目線の先の居たのは彼等赤い髪とは対照的な白銀の髪の子供。雪の中だと溶け込みそうな色の髪だったが、よくよく見れば銀灰色に近い色合いだと、室内に来てから知った。
「この子を?」
「ああ。ここで働かせて欲しいとな」
「ふーん。けどなんだって気絶してるさ?」
「少しばかり馬鹿をやったらしい。理由は本人に訊け」
赤い髪の彼が立ったのは都市外れの大きな屋敷。
通い慣れた風の彼はアレンを肩に担いだままそこを訪れた。
扉を開けて暫くしてやってきたのはやはり赤い髪の少年。
少し色は違っていたが。
右目の黒い眼帯が少しだけ髪の間から伺えた。
「馬鹿?怪我はないんか?」
「ああ。特に目立ったところはない。じゃあ後は頼んだぞ」
「ちょっっ…クロス!?」
クロスと呼ばれた彼は連れて来たアレンをラビに押し付けるようにしてあっという間に屋敷を立ち去った。
押し付けられたラビは自分よりひとまわり以上小さな子供を抱え、唖然とした表情で彼を見送ったが、子供をそのままにしてもおけず、ひとまず客間に運ぶ事にした。
「にしても、本当に白いさね…」
初め彼の肩に担がれたままの子供を見、その髪の色に内心驚いた。老人かと疑ったりもした。
しかし顔を見、老人どころか「天使」だと前言撤回したり。
「目の色はどんな色なんさ?」
いまだ目覚めない子供の目の色を楽しみにラビはその寝顔を見つめた。
「というわけなんさ」
「…そういうことですか」
ラビから説明をきいたアレンはそれ程驚いた様子はなかった。恐らく呆れているだろう。(ラビの「天使」発言などはアレンに語られなかったから別の問題で、だ。)
クロスの奇怪な行動はラビも昔から知っている。
「どうする?此所で働きたくないんだったら、俺からじじいに言っておくし」
ラビの言うじじいとはこの家の主人に当たるのだろう。アレンは考え込んだ。
マナとは渡り歩く旅芸人だったから家というものは存在しなかったし、アレンも行く当ては無かった。ずっとマナが一緒だと信じきっていたから。
アレンは以前マナから言われていた言葉を唐突に思い出した。
それは『立ち止まる』ことを許さないもの。
これも運命かもしれない、とアレンは思った。
それに、ここを出たとしてもアレンに生きている術は直ぐ見つかりそうにはなかった。
「いえ、何かの縁かもしれませんし、ここで働きます。いえ、働かせて下さい。お願いします」
ベッドの上で座り直し、アレンは頭を下げたのだった。
続く→2へ
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