D.Gray-man


秘めコイ 第6話





 彼女は着せかえ人形。




 リナリーは僕なんかと違って凄く可愛くて、綺麗で。
 比べ物にならないのに。
 どうして?
「これなんかどうかしら?」
「リナリー・・・でも・・・」
 リナリーから強制的に着せられた服でアレンは困った顔がほどけない。
「これ、アレン君にはちょっとキツイと思うんだけど、こっちならサイズ気にしなくていい形だし・・・にしてもウエスト細いわね。腰も細くて」
 もしかしたら私よりも細いかも。
 リナリーはクローゼットから衣装を取り出し、ソファは脱ぎ捨てられたのとこれから試着する衣装で埋め尽くされていた。
「リナリーだって・・・細いじゃないですかぁ・・や・・・ちょっと・・・くすぐったいです」
 あの後、アレンはリナリーのお古を譲り受けるということで着せかえ人形と化していた。
 隣室ではその会話をじっと聞いて耐えている健全少年二人。
「すっかり、リナリーのオモチャだな・・・」
「・・・」
 ラビは壁に聞き耳を立てているものの、神田はソファにどっかり腰を下ろしたままだ。何故かその顔は真っ赤。
 ラビもそれを知ってか知らずか神田にわざと聞こえるように会話の内容に茶々を入れる。
「女の子二人なのに、なんか色っぽいさぁ」
「・・・っ」
 ラビの茶々に耐えられなくなった神田が立ち上がった。その顔は先ほどよりも真っ赤だ。
「あれ?どしたん?ユウ」
「・・・帰る!」
「え?帰っちゃうんか?これからなのに」
 想像できた言葉だったが、神田の堪忍袋の小ささにラビは驚きを見せた。
 だが、神田は見た目と同じく硬派で通っているから、リナリー達のような女の子の会話に慣れていない。
「俺にはどうでもいいことだ。それにお茶会はもう終わったんだろう?」
 ラビの言葉に神田はこめかみを引きつらせて叫ぶ。後は勝手にしろと大股で扉に向かう。
「待てって、ユウ!」
「・・・どうしたんですか、二人とも」
「アレン君待って・・・っ!!」
 神田の叫び声が聞こえたらしい、隣室にいたアレンとリナリーが慌てて飛び込んで来た。リナリーはアレンを止めようとしていたが、間に合わず後ろで固まっていた。
「・・・っ!?」
「あれ・・・ん??」
 固まったのはリナリーだけでなく、神田とラビまでも。
「っっ!!!何て格好してやがる!!」
「え!?どんな格好さ?」
 神田の目の前にあったのは下着姿同然のアレン。
 ラビから見たら神田の身体が邪魔になって殆ど見えないのだが、足だけは辛うじて見えて。好奇心からラビは神田の傍に寄り、アレンの格好を確認して、惚けた。いつもは長袖に隠れて見えない素肌の白さが目に入って、思考が停止する。
「・・・坊ちゃま?」
「アレン君!もっ戻ろっ!!」
「えっ!何でですか??」
「いいからっ!」
 神田が顔を背けている間に、リナリーは有無を言わさずアレンを引っ張って隣の扉に消えた。
 それを始終見守っていたのはラビだけ。扉が閉まると、ラビは顔を背けた神田の肩に顎を乗せジト目で彼を睨んだ。
「見たさ?」
「・・・事故だ。故意じゃない。それくらい分かるだろう?」
「・・・分かってるさ。それくらい・・・」
 身体の線が浮き出てしまう薄地のドレスが、アレンの儚さを一層際立てていて。
 本当に貴族の娘ではないかと疑われるくらい、綺麗だった。

 でも出来ればあんな格好は見せたく無かったさ。

 小さく胸の内で呟かれた声は神田に聞き取れるはずは無かった。


「ご免ね、皆。慌ただしくさせてしまって。兄さんもあの後仕事で出て行っちゃったのよ」
 一緒に見送ってくれる筈のコムイの姿は無かった。
 仕方なしにリナリーだけが3人を見送る形になって。
「いえ、コムイさんも忙しいから仕方ないです。今日は本当に有り難うございました。お土産まで・・・」
「ううん。もうどうせ着ない服だもの。返って助かるわ」
 リナリーから貰った服は結構な量になった為、後で郵送するということでラビとアレンはこれから歩いて自宅へ向かう。
 リー家から門を潜ろうとすると後ろから神田の声がかかった。
「おい、本当に乗ってかなくていいのか?雪だぞ?」
 神田は一人屋敷から寄越された馬車に乗っていて。
「いいんさ。どうせそんなに遠くないしな、アレン」
「僕は構わないんですが、坊ちゃまは本当に良いんですか?」
 いつもだったら馬車に乗って戻ってくるラビを見ていたが、今回は断ったようだ。
 アレンは躊躇いがちにラビを見上げ確認する。自分は馬車に乗り慣れていないから別段問題ではないが。
「いーの、いーの。じゃあな。ユウ」
「チッ・・・せいぜい滑って転ぶんじゃねぇぞ、馬鹿兎」
「おう」
 結局神田はそのまま馬車を走らせ帰途に向かった。
 それを見送ったラビはアレンを振り返り、手を差し出して来た。
「?」
「寒いしさ、手繋がない?」
「え?でも・・・」
 それは他人に見られたらまずいのではないかと思う。
「大丈夫さぁ。どうせこっから先は誰も通らないしな」 
 ラビは時折強引だ。けれどアレンはそんな強引さは嫌いではなかった。
「それに、アレンが転びそうだし、引っ張っていくさぁ」
「・・・そんなにトロくないです・・・」
 ラビの言葉にちょっとだけ不機嫌を醸し出しながらそっぽを向いてみせた。
「まあまあ。ほら、行くぞ」
 ラビは人なつっこい笑みを浮かべて、いつまで経っても差し出されないアレンの手を掴み、一歩踏み出す。
「・・・はい」
 アレンも仕方なしに苦笑して歩き、二人は帰路に向かった。






 続く→7へ
 
 

 

アレン、いわゆるキャミドレスってやつ(もちろん薄手のボレロを羽織ってました)を着ていたんですよ。
神田はああいうの苦手でしょうしね・・・(=▽=);
うちのアレンちゃんは結構胸大きめです。(Dかな?Cよりは上かと・・・)
ところでこの後二人を転ばせようと算段したものの、断念しました。さらに倍は長くなって切れなくなりそうだったので

 

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