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少女、黒い男と出会う。
「ティキ、こっち!」
「おう」
「?」
アレンは朦朧としつつ声を聞いた。それは足音と共に訪れて来る。
「あ〜間に合ったかな?おい、その辺にしない?」
駆け付けたのは全身黒い長身の男。 口にはまだ火のついた煙草。
「げっ…やべ、おいっ」
「ああっ」
男達はティキを見て真っ青になり、どさり、とアレンの身体を放り投げて走り去った。
「ぁっ…!?」
アレンは寸前の所で助かったらしく、いきなり入って来た空気に咽せ込んだ。心臓と肺が痛い。
ティキと呼ばれた長身の男はそれなりに力を持つ人間らしい。
遠く豆粒になっていく二人組を眺めて「あ〜面倒だな。逃がすんじゃなかった」とか呟きながら少年と、倒れたままの少女の元へやって来た。
「お姉ちゃん」
「無事そうか?」
「息…苦しそう」
「そうか。大丈夫かー?」
ティキは涙目になって依然咽せているアレンの背をさすってやる。
みれば服もぼろぼろだったからアレンがどんな酷い目に遭わされそうになったかは検討がついた。
「間に合って良かったなー」
「あ…ありがと…ぅ、ござい…まし…た」
アレンは息も絶え絶え状態のままだったが、なんとかお礼を言う事は出来た。
間一髪だった。お礼という言葉だけでは足りないかもしれないが。
「いやいや、うちのイーズを助けて貰ったんだし、おあいこでしょ」
「そんな…僕…こそ…命を救っ…て頂いて…」
アレンは喋ろうとして、また咽せた。
先ほどよりは痛みも和らいだが、殴られた所や押さえつけられていた背中など痛い所は多い。
「あーもう喋んなくていいから」
「っげほっいえっ…」
ティキは内心感心していた。あんな目に遭ったというのに目の前の少女は気丈だった。
普通未遂とは言え恥ずかしい目に遭ったのだから、それなりに男に対して恐怖するだろうに。
アレンはティキが背中を擦ってもその手を撥ね除けなかった。
強いな。
気が強いだけには収まらないなとティキは思った。
それはアレンの容姿から。
「よし、お礼に君を送って行こう。家はどこかな?」
「…大丈夫です。お使いの途中で…まだ帰れませんから」
今このぼろぼろの状態で帰るわけにはいかない。
ラビはきっと怒るだろうとアレンは思ったが、服を買い替えるわけにもいかなくて、困った。
「お使い?君メイドかなにかか?その服…」
コートの中から見える制服に、ティキは気付いた。
アレンも裂かれた服を掻き合わせて頷いた。下着が見えてしまっていたのを慌てて隠す。
「…あ…はい。一応ハウスキーパーです。住み込みの、ですが」
そういえば目の前の男性にはあの二人組も恐れをなしていたが、一体誰なんだろうとアレンはぼんやり思った。身体中の痛みと暑さで彼と少年の顔がぼやけている。
ティキはアレンの返答を聞き、暫く考えている表情だ。
結果。
「うん?じゃあ俺が代わりに買い物してそのまま送って行こう」
イーズと呼ばれた少年と顔を見合わせ、その答えが出た。
「いえっ僕はもう大丈夫ですから…あれ?」
アレンは慌てて立とうとしたが、身体に力が入らないことに気付く。
「そんな格好で店に入ったんじゃモノ売ってもらえないかもよ?」
「ゃ…」
ティキはそれを見越していたらしい。素早く少女の身体を横抱きにして立ち上がる。
そして隣に控えていた少年を振り返る。
「イーズもそれでいいだろ?」
「うん」
少年はにっこりと微笑んだ。異存はないらしい。
「で、お嬢さん。お名前は?」
「アレン…です。アレン・ウォーカー。あの、貴方は…」
アレンが名前を訊き返すとティキはウインクして見せた。
「俺の名前はティキ・ミック。こっちはイーズ。じゃ行こうか」
結局腰が抜けていたアレンは、助けられた上に送って貰う事になってしまったが。
続く→11へ
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