|
このお話は全くパラレルです。
アレンが15歳で中学三年生(しかも♀)
↓
ラビと神田は高校三年生 ↓
リナリーは高校一年生です。
↓
こんかいはあのシスコン兄さん初登場!
「にしたって、なんで科学準備室なんさ?別に教室でもいいんじゃねぇの?」
「ダメよ。いつどこで誰が聞いているか分からないもの」
「?」
素朴な疑問を投げかけたラビの言葉に、リナリーはどこか遠い目をして答えたのだった。
紅いオオカミ、事情を少しだけ知ることになる
時間は放課後。
場所は科学準備室。
リナリーは準備室中央に配置してある机に腰を下ろすと待っていたラビを見返した。
「アレン君の事を話す前にラビに確認しておきたいことがあるの」
「なにさ?」
「アレン君がラビに・・・どこまで自分のことを話したかってこと」
リナリーの表情は硬い。それも無理はない、妹のように可愛がっているアレンの事に関わっているから。けれどラビも神田も事情を知らない。先日、ラビの家で発見された際に話した彼女の境遇はほんの一部。
今アレンは一人暮らしで、保護者であるクロス・マリアンは放浪癖が抜けない為行方不明。両親はいない上、孤児らしい。
それを知った上で、どこまで話すべきかを判断するのはリナリーだ。
リナリーの言葉に神田も釣られたように硬い表情でラビを振り返った。
彼は思っていた以上にラビとアレンの仲が縮まっていた事に驚いているのか、その視線は険しいものに変わっていた。
「どこまでか・・・そうさね・・・アレンの左眼が殆ど見えてないってことしか・・・あのキズと関係しているのは俺にも分かったさ。アレンには確認しなかったけど」
それはラビでなくても推測できた。彼女の、左眼を裂くように出来た頬の傷がそれを物語っている。
「見えてないのか?あれで?」
神田はラビの言葉に呆然とした。あの白い髪の少女からはそんな素振りは全く見られなかった。
「・・・それじゃ私から話せることは本当に少しね・・・当のアレン君に黙って話す内容じゃないし」
「リナリー?」
「どういう意味だ?」
リナリーの苦笑した表情に違和感を覚えながらラビと神田は次の言葉を待つ。
「言葉どおりの意味よ。今、勝手に話せる内容じゃないの。アレン君の・・・事情が事情だから」
アレン君のあの左眼は、3年前のある事件で見えなくなってしまったの。髪の色も・・・その所為ね。前は栗色の髪だったらしいわ。
次のリナリーの言葉があって、ラビと神田はとても複雑で神妙な表情をするしかなかった。
人の髪の色が失われる程の事件に。
「3年前の事件って一体何があったんさ?」
初めに口を開いたのはラビが先だった。神田はまだイマイチ飲み込めてないらしい。
「・・・事件についてはまだ話せないわよ」
リナリーはにっこりと微笑んでラビに返した。その笑みは何故か迫力を持っていて、ラビや神田を固まらせた。
「・・・分かったさ・・・けどなんでここに呼んだんさ?」
ラビ達の教室は放課後には殆ど生徒が残らない。3年は今の時期、自由登校になっていたから。
「あまり教室で話すような内容でもないでしょ?」
リナリーの言葉にラビと神田は視線を見合わせた。
「アレンの親って、もしかしてその事件の所為で亡くなってたりするんか?」
「・・・ええ」
「そりゃ・・・ショックだったろうな・・・」
そういえば、ラビも今の祖父は血のつながりのない人間だとリナリーは思い出す。これでも目の前の二人とは長いつきあいでそれなりに事情を知っている。しかしラビの言葉はリナリーの予想外だったらしく、一瞬彼女の表情が歪んで泣きそうなものへ変わった。リナリー達の親も彼女が幼い頃に病死していて今は兄コムイとの二人暮し。両親が亡くなった時はあまりに幼すぎて『死』というものに、実感が湧かなかったから悲しむことは無かったし、なにより兄が居てくれたから悲しいとは、リナリー自身は思っていなかった。
けれどアレンは目の前で親が亡くなっているのだ。
リナリーは彼女の境遇を思うと胸が痛んだ。
「そんなに深い事件なのか?」
神田の質問にリナリーは困惑した表情を浮かべた。彼はあの少女から想像できなかったのかもしれない。
もっとも、『深い』と一言で片付けるには複雑な状況だったりするのだが。
「深いのよ。一言では言い表せないくらいにね。・・・最も私はその場に居合わせた訳じゃなかったから本当の事は知らないの。事件はクロス先生が教えてくれたのよ。ちょうど事件の直後で・・・アレン君を連れて家にやってきた時に」
その時、初めてアレン君と出会ったの。
当時の事を思い出しているのだろうか、リナリーはどこか遠い目で視線は宙にあった。
リナリーの表情にラビと神田はそれ以上口を開くことは出来なかった。
聞くに聞けない雰囲気もあって、だが。
やがてそこへ重い空気を変えられる人物がやってくる。
ガラガラ・・・。
引き戸が動いて、三人の視線がそちらへ集中した。
顔を見せたのは三人もよく知っている人物だった。
この三人が通う高校にもちょくちょくやってくる臨時教師。
「リナリー、遅くなったね」
「兄さん?仕事終わったの?」
「「コムイ!?」」
コムイ・リーの登場に部屋の空気が変わった。
「リナリー、聞いてないさ。コムイも呼んだんか?」
「ええ。でも予想よりアレン君はまだ何も話してないからやめておこうと思って」
「アレン君のことについてリナリーから相談されていたからね。僕も来ることにしておいたのさ」
どうやらリナリーはここに来る前既にコムイに相談しておいたらしい。でなければ出来ない発言。
リナリーの言葉にラビは酷く残念そうな表情をして見せた。
その表情にリー兄妹は苦笑して見合う。
神田は一人置いていかれた風な、面白くないといった表情だ。
「リナリーはどこまでアレン君の事を話したの?」
コムイと呼ばれたリナリーの兄はリナリーの隣に腰を下ろした。リナリーは準備室にあった机の上に座って居た為に必然兄を見下ろす形になるが、コムイは別に指摘することはなかった。
「本当にちょっとしか話してないわ」
「そう・・・事件のことは?」
「詳しいことは何も。アレン君のあの頬の傷と髪の色が3年前の事件の所為だということくらいしか」
リナリーは首を横に振った。それに合わせて神田とラビが頷いてみせる。
「リナリーの言う通りだ」
「うん。それまでしか聞いてないさ」
三人がコムイの質問に素直に返した。
コムイは三人の顔を黙って見渡す。何かを見定めている、そんな視線で。
「うん。そのようだね」
コムイは三人の言葉と表情に嘘がないことを確かめた。
続く >>8
|